あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。(映画)

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。(映画)

『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』とは、汐見夏衛によるライトノベルならびに原作をもとに制作された漫画、実写映画である。
原作が小説投稿サイト「野いちご」に公開された後、2016年7月にスターツ出版文庫として刊行された。その後は2021年9月から2022年7月にはマツセダイチ作画によるコミカライズ化、2023年には成田洋一監督による実写映画化など、さまざまなメディアミックスが行われた。
1945年にタイムスリップした女子中学生と特攻隊員の青年の切ない恋を描く物語である。

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。(映画)のレビュー・評価・感想

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。(映画)
9

未来を守るために~戦時中の人々の思いと葛藤

バイオレンスな描写はなく、戦時中の日本にタイムスリップした主人公・18歳の百合の視点を通して、戦争の無情さや人々の心の葛藤をよく描いた感動作である。
特攻隊員たちは小さな飛行機で巨大な敵艦に突っ込むため、死ぬことが分かっていながらも、家族や国、未来のために命を賭ける姿は、日本独自の自己犠牲と忠誠心を象徴している。
百合の恋人・彰は、「ぼくたちが出撃しなければ、日本がどうなるか分からない。未来の子供たちには、戦争のない素敵な世の中を作ってほしい」と、未来を守りたいという強い願いを伝える。彼が守ろうとした「未来」が今日の平和であり、その重みを改めて感じさせられる場面である。

一方、全ての兵士が同じ覚悟を持っていたわけではなく、家族のもとへ逃げ帰った者もいた。この現実が、戦争の中で人々が抱えた葛藤の深さを物語っている。

無事を祈る食堂の女将つるは、着物を売ってお米を買い、特攻隊員に料理を振る舞う。少しでも安らぎを与えたいという思いと「生きて戻ってきてほしい」という願い、「もう会えない」という覚悟が入り交じるつるの葛藤が痛いほど伝わってくる。また、基地で野球を楽しむ兵士たちを見て、戦争さえなければ普通の若者として過ごしていただろうと思い知らされる。

戦争を経験したゆりが、現代に戻り母に感謝の言葉を伝える場面も印象的だ。本作は、彼らが守ろうとした未来を私たちがどう受け継ぎ、平和を守るかを問いかける作品で、若い世代に1度は観てほしい作品である。

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。(映画)
7

若者におすすめの戦争映画

戦争の残酷さと、日常にひそむ幸せや命の尊さについて考えさせられる映画でした。戦争時代の特攻隊の話という点では特別感はありませんでしたが、それに加えて、現代の高校生がタイムスリップするところに、いつもとは違う面白さを感じます。「お国のために命を捧げる」という戦争時代の考えと、「戦争で日本は負ける」「命を無駄にするべきではない」という現代の考えがぶつかることが多くあり、逆らうことができないその時代の価値観に、なんとも言えない悲しさが込み上げます。特攻隊員の1人が決戦の前日に脱走しようとし、他の隊員から引き止められるシーンでは、戦争時代であっても、愛する家族とともに生きたいという気持ちとの葛藤が描かれています。しかし、悲しいシーンだけではなく、主人公以外の恋愛模様や特攻隊員同士の絆など心温まるシーンが散りばめられていて、飽きることなく見続けることができます。クライマックスは予測可能ではありましたが、共に生きることができなかった主人公と特攻隊員の男性との結末は、涙なしには見れませんでした。現代の高校生が主人公ということもあり、若者にとってはわかりやすい描写が多く、見やすくまとまっています。戦時中の暮らしや考え方、特攻隊としてお国のために命を落とした若者がいたことなど戦争について考える良いきっかけになる映画です。