未来を守るために~戦時中の人々の思いと葛藤
バイオレンスな描写はなく、戦時中の日本にタイムスリップした主人公・18歳の百合の視点を通して、戦争の無情さや人々の心の葛藤をよく描いた感動作である。
特攻隊員たちは小さな飛行機で巨大な敵艦に突っ込むため、死ぬことが分かっていながらも、家族や国、未来のために命を賭ける姿は、日本独自の自己犠牲と忠誠心を象徴している。
百合の恋人・彰は、「ぼくたちが出撃しなければ、日本がどうなるか分からない。未来の子供たちには、戦争のない素敵な世の中を作ってほしい」と、未来を守りたいという強い願いを伝える。彼が守ろうとした「未来」が今日の平和であり、その重みを改めて感じさせられる場面である。
一方、全ての兵士が同じ覚悟を持っていたわけではなく、家族のもとへ逃げ帰った者もいた。この現実が、戦争の中で人々が抱えた葛藤の深さを物語っている。
無事を祈る食堂の女将つるは、着物を売ってお米を買い、特攻隊員に料理を振る舞う。少しでも安らぎを与えたいという思いと「生きて戻ってきてほしい」という願い、「もう会えない」という覚悟が入り交じるつるの葛藤が痛いほど伝わってくる。また、基地で野球を楽しむ兵士たちを見て、戦争さえなければ普通の若者として過ごしていただろうと思い知らされる。
戦争を経験したゆりが、現代に戻り母に感謝の言葉を伝える場面も印象的だ。本作は、彼らが守ろうとした未来を私たちがどう受け継ぎ、平和を守るかを問いかける作品で、若い世代に1度は観てほしい作品である。