黒博物館 ゴーストアンドレディ

黒博物館 ゴーストアンドレディ

『黒博物館 ゴーストアンドレディ』とは、藤田和日郎による漫画で、「黒博物館」シリーズの第2作目にあたる。講談社の『モーニング』にて、2014年52号から2015年30号まで連載された。クリミア戦争の戦場で見つかった、銃の弾丸と弾丸が正面衝突しひとつの塊となった実在の遺物をモチーフに、なぜその遺物が生まれたのかを描いている。

黒博物館 ゴーストアンドレディのレビュー・評価・感想

黒博物館 ゴーストアンドレディ
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あるゴーストのもとに持ち込まれた奇妙な依頼...その依頼をした彼女の名前は

藤田和日郎による漫画作品。劇場に棲みつく幽霊の男と、誰もがその名を知る「彼女」の強い想いが時を超えた深い絆として描かれていく物語。2024年には劇団四季により舞台化もされている。
とあるイギリスの劇場に棲みついた、通称「シアター・ゴースト」のグレイ。彼のもとに訪れたある女性の奇妙な依頼。強い意志を感じさせる瞳を持ちながらも、彼女は「自分にとりつき殺してくれ」とグレイに懇願する。最初は軽くいなしていたグレイだったが、なぜ彼女が死にたいと願うのか、話を聞くうちに彼女の揺らがない思いに惹きこまれ、彼女と行動を共にすることを決意する。そして、行動を共にするうえで交わした約束は「彼女が絶望したそのときに、自分が彼女を殺す」というもの。演劇が好きで劇場に棲みついた彼にとって、目の前に現れた彼女は「悲劇のヒロイン」であり、絶望した彼女を殺すことで、彼自らその「悲劇」の舞台の登場人物になろうという思惑からの申し出だった。すぐに彼女が絶望すると思い、交わした約束。実際、看護師として戦場に赴く彼女をどんどん過酷な状況が襲う。しかし、彼女は絶望するどころか、周囲の厳しい環境に抗い始め、グレイの計画は崩れ始める。と同時に、時間を共にする彼と彼女の間には「絆」のような感情が生まれ始める。誰もがその名を知る彼女の名前は「フローレンス・ナイチンゲール」といった。
「シアター・ゴースト」のグレイが幽霊になり、劇場に棲みついたのはなぜか。そして、「絆」のような感情が生まれ始めたグレイと彼女に忍び寄る怪しい影。その「怪しい影」はグレイと生前の因縁があった。グレイと彼女の間に生まれた「絆」の行く先は。
飄々とした態度の軽い語り口のグレイ。その軽い語り口からどこか憎めない雰囲気を醸し出し、読者は親しみを覚えるが、物語冒頭の彼は「ヒーロー」ではなかった。しかし、物語を読み終えたとき、読者は最初に抱いた彼の印象との違いに驚く。それは、「人を信じたくても信じられなかった」彼が彼女と出会ったことで再び「人を信じ、守りたいと思うようになった」からだ。誰も信じることができなかった彼が信頼を託した彼女の生き方とは。ぜひその姿、そして彼と彼女の圧倒的な想いの強さを、読者自身の目で確かめていただきたい。

黒博物館 ゴーストアンドレディ
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【ネタバレ】黒博物館ゴーストアンドレディの感想

「ゴーストアンドレディ」は、藤田和日郎さんの「黒博物館シリーズ」の第2作目にあたります。
代表作の「うしおととら」全33巻、「からくりサーカス」全43巻と、それはもう壮大なストーリーで巻数も多いですが、「ゴーストアンドレディ」は上下巻の2冊で完結。それでも、藤田さん特有のストーリーの壮大感がきちんとあります!

主人公は2人いて、実在の人物ナイチンゲールと、もうひとりがゴースト。藤田さんの漫画の登場人物は、いつも辛い、せつない過去がありますが、本作でいうと特にゴーストの過去が悲しすぎる。人物の背景がしっかりと設定されているし、きちんと語られるからストーリーに奥行きを感じるし、感情移入しちゃいました。

ストーリーは、ナイチンゲールの医療現場での戦いに沿って進んでいくのですが、ナイチンゲール、マジかっこいい。彼女の情熱と、医療現場の改革といえる行動、まさに救世主。戦略、リーダーシップと、改革っぷりがとても気持ちいい。お仕事漫画な一面もあるかも。
ゴーストはゴーストで、生霊やゴースト同士の戦いシーンがたくさんあって、勝つためにみんな必死です。
ナイチンゲールの戦いと、ゴーストの戦い、応援したくなります。「この困難を突破してくれっー!」感じで一気に読んでしまいました。

劇団四季でミュージカル化もされて(私は見に行きましたが)、劇しか見ていない方は、漫画も読むことをお勧めします!

最後は泣きました。