バービー(映画) / Barbie (film)

バービー(映画) / Barbie (film)のレビュー・評価・感想

バービー(映画) / Barbie (film)
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バービーの世界へようこそ:フェミニズムとファンタジーの融合

「バービー」は、単なる玩具のキャラクターを映画化した作品ではありません。この映画は、現代社会の複雑なテーマを取り入れながらも、楽しさとユーモアに満ちたファンタジーの世界を描いています。グレタ・ガーウィグ監督が手がけたこの作品は、彼女の独特の視点と強烈なメッセージ性が光る一本となっています。

理想的なバービーランドに住むバービー(マーゴット・ロビー)の日常から物語はスタートします。この世界はすべてが完璧で、ピンク色のパラダイスです。しかし、バービーが次第に「現実の世界」の存在を知ることから、物語は大きく動き出します。現実世界への旅を通じて、バービーは自分の存在意義や、社会の中での役割についての疑問を抱き始めます。

この映画の核心にあるテーマは、フェミニズムと自己認識です。バービーは、自分がただの「完璧な女性像」ではなく、もっと複雑で多面的な存在であることに気づき始めます。この過程で、彼女は現実世界の女性たちが直面する困難や不平等を目の当たりにし、自分自身のアイデンティティを再定義しようと試みます。特に、ケン(ライアン・ゴズリング)との関係が、性別の固定観念や役割に対する批判を鮮やかに描き出しています。

映画全体を通して、ガーウィグ監督は、社会における女性の役割や期待に対する鋭い批判を込めています。しかし、重いテーマを扱いながらも、映画は常に軽妙で、視覚的に魅力的な要素を忘れません。バービーランドの美しいデザインやカラフルな衣装、そして絶妙なユーモアは、この映画を楽しく鑑賞できるものにしています。

特筆すべきは、マーゴット・ロビーの演技です。彼女は、バービーというキャラクターに深みを持たせ、単なる人形以上の存在に仕上げています。また、ライアン・ゴズリングは、ケンというキャラクターにユーモアと温かみを与え、2人のケミストリーが映画をさらに魅力的なものにしています。

ただし、この映画がすべての視聴者にとって満足のいくものかというと、そうではないかもしれません。フェミニズムのテーマや、バービーというキャラクター自体に対する先入観を持つ人々にとっては、映画のメッセージが強すぎると感じるかもしれません。また、一部のシーンやストーリー展開がやや強引に感じられることもあります。

それでも、「バービー」は、現代の映画における重要な一作であり、その斬新なアプローチと視覚的な魅力は、間違いなく一見の価値があります。子供向けの映画と思って観ると、その深さに驚かされるでしょうし、大人が観ても十分に楽しめる内容です。

バービー(映画) / Barbie (film)
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実写版映画『バービー』のレビュー

昔から親しまれているバービーの世界観を、そのままボリュームのあるストーリーで映画化した作品です。
キュートで毎日悩み事もなく過ごしていたバービーが、ある日死について考えるようになります。死を考えるようになると、身体にも変化が起きるようになりました。
その原因を突き止めるため、人間界を訪れることになたバービー。人間界との繋がりを持つことで完璧だと思っていたバービーの世界に疑問を持ち始めます。

完璧な生活を送るバービーが、人間の感情の大切さや人間の儚さゆえの美しさに惹かれていくというストーリーの中には、男女の人権の在り方や親子の関係の在り方などたくさんの問題提起も含まれています。
老若男女楽しめる内容となっており、見る世代や性別によって感じ方が違って、意見交換も盛り上がる作品だと思います。
特にバービー人形で遊んでいた世代はバービーハウス、バービーの仲間、歴代の衣装もたくさん登場するので、とても華やかで見ているだけでバービーの世界に入ったような楽しい気持ちになれます。
歌唱シーンやミュージカルシーンが散りばめられていて、俳優さんの歌唱力にも圧倒されます。
バービーの世界観を忠実に再現しつつ、話は現実感もしっかりとあり、ファンタジーとリアリティーのバランスがとても良かったです。

バービー(映画) / Barbie (film)
10

映画『Barbie』の感想

この作品は、フェミニズム的で、ポップカルチャーを通して鑑賞者に現代社会の問題を改めて考えさせる深い意味を持つ作品であった。
物語は、世界的に有名な人形「Barbie」が不調を治すために、自分の持ち主に会いに行くところから始まる。
この作品の最大の魅力は、やはり可愛すぎる世界観だろう。まず、たくさんのBarbieとKenが住むBarbie Landがとにかく可愛い。家から車、歯ブラシまでBarbieのおもちゃのままで、ピンクが貴重になっているキラキラした世界観には誰もが魅了されるだろう。さらに、Barbieを演じるマーゴット・ロビーの可愛らしさにも惹き込まれる。彼女は、『スーサイド・スクワッド』でハーレイクインを演じたことで有名な女優で、小悪魔的な魅力を持っていたハーレイクインとは違ったテイストの可愛らしさがBarbieでは披露されている。この「可愛い」を前面に押し出した世界観は多くの人をワクワクさせるだろう。
また、所々にコメディ要素があるところも魅力だ。スーツを着たお偉いさんたちがローラースケートに乗っていたり、Kenたちが少しダサめだったり。所々に、クスッと笑ってしまうような要素が込められている。
このように、可愛らしい世界観とユーモアで物語が繰り広げられる『Barbie』だが、フェミニズムの問題にフォーカスされている。例えば、冒頭のシーンでは、Barbieが「何者にもなれる」存在であることが強調される。また、女性優位社会の「Barbie Land」と男性優位社会の「現実世界」が物語を通して対比されている。特に、現実世界を知って、「Barbie Land」を男性優位社会に変えようとしたKenの行動には、男女不平等社会の問題がうまく描かれている。
このように、映画『Barbie』は、可愛らしくてユーモア溢れた作品を通して、現代まで根強く残る男女の不平等問題に訴えかけるフェミニズム的な作品になっている。楽しめるだけではなく、現代社会の問題を改めて考える機会を得ることができる意味深い作品なので、ぜひ一度は観るべきだ。

バービー(映画) / Barbie (film)
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映画バービーについて

映画バービーに対しての私の印象は二転三転した。私が映画バービーの存在を知ったのは、プロモーション映像が公開されたときだ。巨大なバービー(マーゴット・ロビー)がセクシーな水着姿で岩山に立ち、周りにいた少女はとても驚いていた。私はこの時バービー人形が巨大化する話なのかと思い、とても興味を持った。その後アメリカで公開され、この作品がフェミニズムに関する作品だと評されていることを知った。日本公開は8月、その日を楽しみに待っていた。同じくアメリカで公開され、大成功を収めている作品にオッペンハイマーがある。原爆の父と呼ばれるオッペンハイマーについての作品だ。こちらの作品は日本公開が決まっていない。SNSではこの2つの作品をかけ合わせたBarbenheimerのタグが盛り上がっており、同時期に公開されともに大ヒットしている二作品を応援するタグであった。しかし、一部のファンはこのタグを使用し原爆を揶揄する悪質なコラージュを作成した。また、バービー公式アカウントがこれに好意的なリプライをしており、日本ユーザーを中心に炎上した。映画バービーを楽しみにしていた多くの日本人にとって、公式アカウントの行為は裏切りである。

バービー(映画) / Barbie (film)
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これがアメリカのコメディかと

別の映画を観に映画館へ行った際、女性用化粧室から、ピンク色の洋服やアクセサリーなどをつけた女性客がわらわら出てきて、映画を観るにあたってのテンションの上げかたというか、一体感に驚かされ、自分も『バービー』を鑑賞することにした。
日本での公開前にSNSで炎上していた為、観ることを躊躇していたが、いざ鑑賞してみるとそんなことが気にならないくらい、普通に笑えた。そして、周りの観客もまた、日本の映画館とは思えないくらい平気で声を出して笑っていた。普通の上映でこれだから、きっと応援上映などがあれば、観客のファッションのピンク率はもっと高まるだろうし、歓声もものすごいことになりそうだ。想像してみると楽しかった。
子供向けの玩具が主人公として立てられた映画にしては、しっかり下ネタが入っていたが、コメディ映画なので非常にカラっとしている。
ストーリーの作り自体は非常に雑なように感じた。これは誰が観てもそう受け取るであろう。その問い、投げかけに対して、その回答は適切なのだろうかと疑問に感じるシーンがちらほらある。翻訳の問題かと思ったが、そうでもない。翻訳者も悩んだだろう。だがしかし、コメディ映画が丁寧なメッセージを鑑賞者に訴える必要もないのかもしれない。
何も考えず笑いたい時にみるのに相応しい映画だった。