鬱ごはん

鬱ごはんのレビュー・評価・感想

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鬱ごはん
8

気が付いたら飲み込まれている、鬱野の鬱空気に。

定職に就かず一人ぼっちで飯を食う、鬱野タケシ。彼の頭の中はいつも悶々としています。考えすぎる日もあって、行動したら上手くいかないことばかり。関西弁の黒猫の妖精(幻覚に思われるけれど、法的にアウトな薬物の表現はありません)に話しかけられたり、突っ込みを入れられたりもします。A5サイズのコミックスの中で、彼は晴れない心を抱えた日常の中で飯を食って生きています。旅行に行く話もありますが、後ろ向きな考えが彼から離れないうえに、ドラマティックな出会いも出来事もとくにありません。一度はブックオフで売って手放しました。しかし、また読みたくなって大型書店で定価で買ってしまいました。後悔なんて微塵もしていません。施川ユウキの作る鬱野タケシの鬱な空気に、あなたも虜になるでしょう。第四巻と連載を公開しているウェブサイトでは、コロナ禍となった世間で鬱野がフードデリバリーの職に就いたり、ChatGPTで暇をつぶしたり、配膳ロボが働いているレストランで食事をしたり、変わっていく世の中で彼なりに思考を巡らせて、今日も静かにご飯を食べて生きている鬱野の姿が見られます。何のために食べて何のために生きるのか、彼自身の答えは見つかっていません…。