鬱ごはん

tiduwa1のレビュー・評価・感想

鬱ごはん
7

終始重たい空気と考えの中で主人公が飯を食っています!第1話「豚焼肉定食」

主人公で就職浪人の鬱野たけし(22歳)は、夕食時に食券制の定食屋に入り、豚の焼肉定食を注文。料理が運ばれてくると、関西弁を喋る黒猫の姿をした妖精が「相変わらずシケた飯食っとるのー」と、話しかけてきます。この妖精は、鬱野に憎まれ口を叩いたり、言い訳ばかりして就活をしない鬱野にツッコミを入れて叱ったりする、鬱野の唯一の相方のようなキャラクターでした。しかし、2巻からぱったり姿が見えなくなってしまいます。いつか、再登場してほしいです。
さて、豚肉にポン酢をかけて食べ始める鬱野ですが、彼は食事中とは思えぬ考えをしながら豚肉を嚙み砕きます。人間が豚肉を食べると、豚肉の栄養素が舌の味蕾から脳までの感覚神経を通り、人は豚肉を「美味い」と感じる。食べられるために育てられた家畜の豚の死は、食事中の数分間に感じる脳みその電気信号に変わるだけ。セットのキャベツ多めのサラダを食す際には、ベジタリアンの前世は食虫植物に食い殺された虫であり、前世の恨みを晴らすべく野菜を食らっている。これらの彼の考えに、一切の冗談はありません。いったい、どうやって生きていたら、食事に対してそこまで虚しくなる考えを抱けるのでしょうか。
ただ、食券制の飲食店から出る時に店員さんとの距離が離れていると、声を張って「ご馳走様でした」と言う勇気がない点は共感できます。