静寂と銃声
コーマック・マッカーシーの同名小説を映画化したもので、2007年に公開されました。彼の作品らしい冷徹なまでの現実的な描写に、コーエン兄弟得意のブラックかつシニカルなジョークの要素を加えたような作品です。
物語はアメリカ・メキシコの国境で、麻薬の取引現場から大金を持ち出した主人公を追って、賞金稼ぎや殺し屋が主人公を追うというもの。
なんといっても、主演(助演?)のハビエル・バルデムの演技が圧倒的です。撮影監督のロジャー・ディーキンスの撮影手腕と相まって、全編に渡って彼の演技はこちらに緊張を与え、目が離せません。
派手なアクションや音楽より、映像の陰影、音そのものが緊張感をもたらしている作品のように思います。
モーテルの廊下で、殺し屋が家畜の屠殺用の器具につながれたボンベを床に置く、かすかな金属の反響音。売店のカウンターの上で音を立てる菓子の包み紙。国境の町の空気が伝わってくるような陽の光と砂漠、スーツの明るい灰色。
こうしたもの1つ1つの要素と、役者の素晴らしい演技はどれも味わい深く、雰囲気を楽しめます。
また根底を流れる哲学をとっても、言葉で説明出来ずとも、感じられるものがあると思います。
上質なサスペンス・スリラーを求める方には、ぜひともおすすめしたい作品です。