お守りにしたくなるような言葉、「カモン カモン」
1人の男とその甥の数日間の共同生活を描いた、よくある主題ではあるが、優しさと哲学にあふれたマイク・ミルズらしい作品だった。
ホアキン・フェニックス演じるジョニーは、さまざまな街で子供たちのインタビューを集めているラジオジャーナリスト。ある日、妹の甥ジェシーを預かることになり、数日間の共同生活が始まる。
ジェシーがとにかく愛らしく健気で、ジョニーも「こんな伯父さんがいたらいいな」と思うような、少し癖がありつつ温かな人柄である。ほんわかと楽しめる作品、だけではないところが本作の見どころか。
子供たちのインタビューでは、その純粋さと鋭さから、大人には思い浮かばないようなハッとする回答が語られる。大人に世話をされなければならない子供と、子供を導かなければならない大人の関係性というものを深く考えさえられた。
中でも1番印象に残ったのは、ジェシーが衝動に任せて行動してしまったあと、それを自分で理解し恥じているシーン。
大人になるということは自分自身をコントロールできるようになるということ。していいことと悪いことの区別は分かるのに、行動がちぐはぐになってしまうもどかしさが痛いほど分かって、必死に成長しようとしているジェシーが愛おしくてたまらなかった。そんなジェシーと一緒に過ごすことで、ジョニーも共に成長しようとしている姿が素晴らしいなと思った。
「カモン カモン(先へ 先へ)」という、お守りにしたくなるような優しい声音が耳から離れない。