カモン カモン / C'mon C'mon

カモン カモン / C'mon C'monのレビュー・評価・感想

カモン カモン / C'mon C'mon
7

お守りにしたくなるような言葉、「カモン カモン」

1人の男とその甥の数日間の共同生活を描いた、よくある主題ではあるが、優しさと哲学にあふれたマイク・ミルズらしい作品だった。

ホアキン・フェニックス演じるジョニーは、さまざまな街で子供たちのインタビューを集めているラジオジャーナリスト。ある日、妹の甥ジェシーを預かることになり、数日間の共同生活が始まる。
ジェシーがとにかく愛らしく健気で、ジョニーも「こんな伯父さんがいたらいいな」と思うような、少し癖がありつつ温かな人柄である。ほんわかと楽しめる作品、だけではないところが本作の見どころか。

子供たちのインタビューでは、その純粋さと鋭さから、大人には思い浮かばないようなハッとする回答が語られる。大人に世話をされなければならない子供と、子供を導かなければならない大人の関係性というものを深く考えさえられた。

中でも1番印象に残ったのは、ジェシーが衝動に任せて行動してしまったあと、それを自分で理解し恥じているシーン。
大人になるということは自分自身をコントロールできるようになるということ。していいことと悪いことの区別は分かるのに、行動がちぐはぐになってしまうもどかしさが痛いほど分かって、必死に成長しようとしているジェシーが愛おしくてたまらなかった。そんなジェシーと一緒に過ごすことで、ジョニーも共に成長しようとしている姿が素晴らしいなと思った。
「カモン カモン(先へ 先へ)」という、お守りにしたくなるような優しい声音が耳から離れない。

カモン カモン / C'mon C'mon
7

ホアキン・フェニックス主演最新作『カモン カモン』レビュー:子育てとは、親育て

『ジョーカー』でアカデミー主演男優賞を受賞したホアキン・フェニックスの主演最新作となる『カモン カモン』。
突如、甥との共同生活を送ることとなったホアキン演じる独身ラジオジャーナリストが、予測のつかない甥の挙動言動に戸惑いながらも、徐々に歩み寄っていく姿をハートフルに描きます。
大人が子育てに苦労する映画はたくさんある中、本作は血縁関係はあるものの、本当の父子ではない2人が年齢の離れた友達、もしくは兄弟のような関係を築いていくのがポイントです。子育ては簡単ではないというのは、実際に小さい子を持つ親なら共感できるはず。だから育児とは、育親でもあります。
また、この作品では、ラジオジャーナリストがアメリカに暮らす子供たちにインタビューするシーンがあります。
彼らの声を聞くことで、ジャーナリストが育児を客観視するという演出の狙いがあるのですが、実は子供の言葉は台本ではありません。自信の境遇やアメリカの現状への不安を抱えつつも、将来への展望を率直にリアルに語っていて実に興味深いです。
不測の事態や劇的な展開といったストーリーではないので、それらを期待すると肩透かしを食らうかもしれません。しかし、コミュニケーション不足を感じる社会において、対話することの尊さや慈しみを感じることのできる一作となっています。