MINAMATA―ミナマタ―

MINAMATA―ミナマタ―

『MINAMATA―ミナマタ―』とは、2020年に公開された映画で、アメリカ・イギリスの合作映画である。この映画は、アメリカの写真家ウィリアム・E・スミスが撮影した水俣病の被害者たちの写真を基に、彼の視点から物語が語られる。水俣病とは、水俣市で発生した水銀中毒の大規模な公害病であり、昭和時代に日本で発覚した公害事件である。
主演のジョニー・デップがウィリアム・E・スミスを演じ、彼が被害者たちの苦しみを訴えるために取り組む姿を描いている。映画は、公害事件の被害者たちの人権侵害や社会的な闘い、そして写真家の役割に焦点を当て、環境問題と人権についての深い洞察を提供する。
『MINAMATA―ミナマタ―』は、水俣病事件とそれに立ち向かう人々の実話を基にしており、環境汚染とその影響についての議論を呼び起こす重要な映画の一つである。
公開はベルリン国際映画祭でワールドプレミアが行われ、その後、日本やイギリス、アメリカ、カナダで公開された。日本では2億5000万円の興行収入を得た。

MINAMATA―ミナマタ―のレビュー・評価・感想

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MINAMATA―ミナマタ―
10

現代の日本人全員が観るべき映画

私は正直、この映画をみるまで水俣病のことは小学校の授業で少し習った程度の上、
自分が生まれる何十年も前のことだったので自分には関係のない遠い昔の出来事ぐらいの認識だった。
でも違った。水俣病に苦しんでいる人は今でも沢山いて、そしてこのような公害は世界中のいつどこでも起こり得る出来事だった。
そして今、私たちが当たり前のように新鮮な食物や安全な水が飲めるのは、間違いなく水俣病含め公害に対して戦ってきてくれた人たちがいたからだ。
公害の原因を作ったのは人間だが、それを止めてくれたのも人間。
もし当時の人達が戦うことを放棄し、泣き寝入りするような状態だったら被害はもっと拡大していただろう。
それこそ、現代を生きる私たちも当事者になっていたかもしれない。
だから、過去にこの映画のように諦めずに戦ってくれた人々には感謝しかない。

だが、今が平和だからといって今後必ずしも公害が起こらないとは限らない。
地球温暖化のようにゆっくり着実に訪れる公害もあれば、福島第一原発事故のように突然来る公害だってある。
私達は、きっといつか必ずそれらの当事者になる。
その時、はたして水俣病に立ち向かった人々のように戦うことができるのか?
いや、本来ならば今すぐにでも立ち上がって公害が起こらないように戦うべきなのでは?
環境問題やその他の問題については偉い人がなんとかしてくれるだろうと他人任せにし、それらのニュースを聞いてもどこか他人事だった。
でもきっとそれじゃダメなんだ。
水俣病に立ち向かった人々のように、これから先の未来を生きる自分たちが、そしてこれから生まれてくる新しい命が笑顔で暮らせるように行動しないといけない。
そこに関係のない人なんかこの世のどこにもいなくて、誰もが加害者であり同時に被害者で。
上手く言葉に出来ないが、今この世界の問題から決して目を背けてはいけない。そう思わせてくれたのがこの映画だ。

特に最後のエンドロールで流れる世界中で起きた公害の写真がその思いをより一層強めてくれた。
私が知らないだけでこんなに多くの公害が起きていて、そしてきっと今もどこかで苦しんでいる人がいると思うと心がとても痛んだ。
公害はもはやその国だけの問題じゃない。
世界の問題で、国とか人種とか関係なくその問題にみんなで立ち向かって助け合えるような社会。
それこそが本当の意味での持続可能な社会なのではとふと思った。
勿論そんな簡単なことではない。でも、簡単じゃないから、限りなく不可能だからと言って何もしなければ本当に不可能になってしまう。
一人一人の力がどれだけちっぽけでも、行動しなきゃ何も始まらない。そんなメッセージも感じられた映画だった。

MINAMATA―ミナマタ―
9

ジョニー・デップの演技が良かったです。

キャリアのはじめは、「エド・ウッド」「ブレイブ」など渋めの映画が多かったジョニー・デップですが、その後は海賊物など子供から大人まで多くの人が楽しめる映画に出演していました。本作では水俣病を取材した写真家のユージン・スミスを演じています。健康を害し、アルコールに依存しているという役柄なので、最近の出演作のものとはかなり違う役柄です。これまでの健康的な役柄とは異なるので、白髪や肌のシワ、シミなども付けて、実在の人物を演じています。日本側の出演者も、國村隼や真田広之、浅野忠信など、豪華な役者さんが出演しています。実際の水俣病の公害訴訟とは異なり、かなり時系列を組み替えて映画にしていますので、そのあたりは注意しておいたほうがいいでしょう。私が子供の頃に報道されていた水俣病ですが、大人になってから映画で見ると違う衝撃がありました。中でも、企業側にとって被害が大きすぎるので、賠償できなくなるというあたりは、最近起きた様々な事故などを思い起こさせました。経営陣にいくら善良な人が居ても、企業では対応できなくなるような事柄には国が積極的に関与するのは当然でしょうが、そのような事故を事前に防ぐことの必要性がよく解りました。