プロミシング・ヤング・ウーマン

プロミシング・ヤング・ウーマンのレビュー・評価・感想

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プロミシング・ヤング・ウーマン
7

『プロミシング・ヤング・ウーマン』の復讐物語

主人公のキャシーは、元医大生、前途有望な未来の約束された女性のはずだった。つまり、『プロミシング・ヤング・ウーマン』というタイトルになるわけだ。30歳を目前に控えた彼女は、医学部を中退し、カフェで働く平凡な日々を送っていた。しかし、夜になるとキャシーは、もうひとつの顔を見せる。キャシーを大学中退に、そして彼女の親友を死に追い込んだ、ある事件の復讐である。そこにあるのは、確かな性の気配だが、決して直接的な描写はされていない。それでも、キャシーの強い怒りの感情やその復讐心から、彼女の親友を死に追い込んだ事件が、どれほど苦しいものだったのかということを読み取れる。
1度は復讐から解放されるも、彼女の恋が、皮肉にもまたもや彼女を復讐に向かわせることになってしまう。ハッピーエンドとは言い難い。キャシーは、ずっとたったひとりで闘っていたのかもしれない。自らの命を賭して、自分自身が危険にさらされると分かっていても、それでもどうしようもなく貫くべきことを持っていた。この映画で描かれているものは、紛れもなく復讐なのだけれど、それでもこれは親友の死に対して、彼女だけができるひとつの弔いだったのかもしれない。

プロミシング・ヤング・ウーマン
9

ユニークな女性の為のブラックコメディ

映画を見る前にタイトルのプロミシング・ヤング・ウーマンの意味を知っているのと知らないのとでは見え方が変わってくる。映画の中で触れられるのだが(字幕・訳として)、事前に知っておいた方がこの作品のニュアンスみたいなものが伝わりやすい。意味は「将来を約束された若い女性」である。なるほど、ヒロインは元医学部生の30代。こういう役をやらせたらハマるキャリー・マリガンがヒロインを演じている。彼女は作品に恵まれている。
脚本が素晴らしく、アカデミー賞脚本賞は納得。まだまだこんなオリジナルのストーリーが生まれるのだと感心もした。
前半、サスペンス仕立てのコメディのようで楽しくもあり、先が読めない展開に引き込まれた。やがて、中盤からなにやら恋愛の要素が入ってくるのだが…気付くとやはりヒロインには幸せになって欲しいと思いながら見ている。しかし、後半新たな展開が待ち受けてるのだ。
終盤から結末はややご都合主義的なところもあるが、それでもこのブラックコメディは非常にユニークでオリジナリティに溢れている。男性への反撃がテーマとなっているようで、それほど押しつけがましいメッセージがあるような感じもない。それよりもこの作品の世界観が飛びぬけて上回っている。