大袈裟な感動やどんでん返しが無く、気が付けば終わる2時間
2006年1月から上映開始。
小川洋子著の同名の小説からなる映画。
まず始めに皆さんにお伝えしたいのは、大ヒットした小説を実写で映画化することはとても難易度の高いものだということ。なぜなら、小説を読む読者が想像するイメージと、映画での表現に大きな違いがあれば読者を納得させることができないからだ。
その点において読者が絶対的に期待していたのは、何とも言い難い温かい空気感ではないだろうか。
本映画では、80分しか記憶が持たない博士と家政婦である杏子、その息子であるルート、普通では考えにくい彼ら三人のやり取りを日常的、かつ終始温かい雰囲気で描かれており、小説を知らない人はもちろん、小説の読者まで納得させられる内容に仕上がっている。
しかし、原作が好きだった読者目線で私が感じたのは、数学博士の異常さが物足りなかったということだ。自分の生活には無頓着であり、身体は痩せ細っていて、部屋はボロボロで服は数着しか持っていない。そんな博士だが、数学だけは世界的な雑誌の難問でも解いてしまう天才なのだ。
寺尾聰が演じる博士は、私がイメージしていたよりも風貌が整っているように見え、実生活に無頓着な博士と天才的な数学博士のギャップが小さく、登場人物が持つ魅力の立体感に欠けるような印象を持ってしまった。