ブラックホーク・ダウン / Black Hawk Down

ブラックホーク・ダウン / Black Hawk Downのレビュー・評価・感想

ブラックホーク・ダウン / Black Hawk Down
7

アフリカ内戦に軍事介入した米軍特殊部隊の苦悩を描く『ブラックホーク・ダウン』

『ブラックホーク・ダウン』は2001年に公開された戦争映画で、監督はリドリー・スコット、脚本はケン・ノーランです。
本作は1999年に発表された同名のノンフィクション(ジャーナリストのマーク・ボウデンによる)を原作としています。ノンフィクションは米国によるモガディシュへの軍事攻撃を素材にしています。作品のキャストは多人数に及び、ジョシュ・ハートネット、ユアン・マクレガー、トム・サイズモア、ウィリアム・フィクナー、サム・シェパード、トム・ハーディがスタッフロールに名前を連ねています。
『ブラックホーク・ダウン』は第74回アカデミー賞の最優秀編集賞と最優秀音響効果賞を受賞しています。2006年には追加映像を封入したDVDが発売され、上映時間は8分間伸びて合計152分になりました。このバージョンのブルーレイと4K版のリリースは2019年でした。
ソマリアの内戦の最中に中央政府が1993年に追い出されたので、国連安全保障評議会は平和維持活動の大義のもとでの軍事作戦遂行を認可しました。大部分の平和維持部隊が撤退したあとで、モハメド・ファラーに忠実かモガディシュの民兵は国連要員に宣戦を布告しました。それに対抗して米国大統領クリントンはレンジャー任務部隊(第75レンジャー連隊第3大隊、デルタフォース、160SOARから構成される)を配備するのでした。

ブラックホーク・ダウン / Black Hawk Down
7

戦場のリアリティに現実を知る

『グラディエーター』や『ハンニバル』で、美しくロマンのあるスペクタクルを見せたリドリー・スコット監督。その世界観に魅せられ、期待していた人々にとって、『ブラックホーク・ダウン』は意表を突かれた作品となりました。
ブラックホークというのは米軍のヘリの名称で、文字通りにダウン=墜落させられてしまうことを表しています。簡単に片づく予定だった米軍による作戦は、現地のゲリラ兵の抗戦により、予想以上に長引き、ドロ沼化。序盤の隊員たちが軽口を叩いている気楽さから一転、戦闘の酷さを延々と見せられることになるのです。そこには、美しい景色をバックにした冒険も、ロマンのあるストーリーもなく、リドリー・スコット監督の作品を知る人は戸惑うことに。映画の中の米軍隊員達がこんなはずじゃなかったと思うのと同様に、観客も衝撃を受ける映像となっています。
そして、カメラの目線はあくまでも客観的であり、戦争映画にありがちな、兵士の栄光や、正義、戦う男達の勇ましさというようなものは表現されていません。そのため、多くの犠牲と損失を出した戦闘がただ非常にリアルに描かれるだけにとどまり、虚しさに放り出されたような感覚を受けました。実際に、戦争から帰還した軍人は虚無感を抱えていることが多いと聞きます。この映画が与える虚しさは、戦争というものの現実なのではないでしょうか。
観客を楽しませ、希望を与えることだけが映画の役割ではない。あるがままを見て、考えさせられることも必要なのだと、そういうことを知った作品です。