ブラックホーク・ダウン / Black Hawk Down

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ブラックホーク・ダウン / Black Hawk Down
7

戦場のリアリティに現実を知る

『グラディエーター』や『ハンニバル』で、美しくロマンのあるスペクタクルを見せたリドリー・スコット監督。その世界観に魅せられ、期待していた人々にとって、『ブラックホーク・ダウン』は意表を突かれた作品となりました。
ブラックホークというのは米軍のヘリの名称で、文字通りにダウン=墜落させられてしまうことを表しています。簡単に片づく予定だった米軍による作戦は、現地のゲリラ兵の抗戦により、予想以上に長引き、ドロ沼化。序盤の隊員たちが軽口を叩いている気楽さから一転、戦闘の酷さを延々と見せられることになるのです。そこには、美しい景色をバックにした冒険も、ロマンのあるストーリーもなく、リドリー・スコット監督の作品を知る人は戸惑うことに。映画の中の米軍隊員達がこんなはずじゃなかったと思うのと同様に、観客も衝撃を受ける映像となっています。
そして、カメラの目線はあくまでも客観的であり、戦争映画にありがちな、兵士の栄光や、正義、戦う男達の勇ましさというようなものは表現されていません。そのため、多くの犠牲と損失を出した戦闘がただ非常にリアルに描かれるだけにとどまり、虚しさに放り出されたような感覚を受けました。実際に、戦争から帰還した軍人は虚無感を抱えていることが多いと聞きます。この映画が与える虚しさは、戦争というものの現実なのではないでしょうか。
観客を楽しませ、希望を与えることだけが映画の役割ではない。あるがままを見て、考えさせられることも必要なのだと、そういうことを知った作品です。