スペースボール

スペースボールのレビュー・評価・感想

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スペースボール
8

ラブ&ピースな笑い

不名誉な称号か、名誉な称号か。
パロディーの帝王、メル・ブルックス。
そんな彼が1987年に手掛けたのは、あの壮大な某スペース・オペラのパロディー。

昔、遥か彼方の銀河系で、スペースボール星の大気を濃くしようと、悪の『スクルーブ大統領』は隣星のドルイデアに侵攻を開始。
一方その頃ドルイデアでは、結婚を嫌がった『ヴェスパ姫』が式直前で逃げ出した。
そこにタイミングよくスペースボール軍が現れ、姫は捕まってしまうのだった。
そんな姫を救うべく、白羽の矢が立ったのが宇宙の流れ者『ローン・スター』と、その毛むくじゃらの相棒『バーフ』。
果たして彼らは、姫を無事救出することができるのだろうか?

ただのおバカパロディーコメディではなく、ちゃんとした娯楽作になっている。
本家風の宇宙を舞台にした冒険あり、悪vs善の闘いあり、仄かなロマンスもあり。
本家と同じくILMがSFXを手掛けており、なかなか本格的!

スペースボール
10

現代ではムリ?パロディのオンパレード!

SNSによるネットワークの広がりによって誰でも気軽に画像や動画を載せられる時代によく取り沙汰されるのが「コピペ」や「盗作」の問題です。しかしインターネットがまだ現れる以前の頃にはそういった行為は悪意や無意識からではなく「リスペクト」や「オマージュ」、「引用」という形で好意的にとらえられ歓迎すらされていました。スペースボールという作品は、あからさまに「スターウォーズ」を元ネタに、他のSF作品からもまるでジグソーパズルを適当かつ強引に繋いだようなパロディの精神に溢れています。監督はコメディ映画の大家で悪事を企む大統領スクルーブにメル・ブルックス。主役のローン・スターは当時ほぼ無名の俳優だったビル・プルマン。悪の指揮官ダーク・ヘルメット役にゴーストバスターズ・ミクロキッズのリック・モラニスが出演し小さい体に不釣り合いな巨大ヘルメット姿でコミカルな芝居を見せます。基本的にほぼスターウォーズのストーリーに似せた構成で大統領とダーク・ヘルメットが帝国、ローン・スターが役柄としてはハン・ソロとルーク・スカイウォーカーを合わせたキャラクターとしてヘルメットに捕らわれたレイア姫的キャラ・ヴェスパ姫の奪還をローンの帳消しを賭けて追跡、救助するも砂漠の惑星に不時着しそこに住む隠者ヨーグルト(メル・ブルックスの2役)に救われ…といった感じで、1シーンごとに何かしらギャグが必ず挟まれる流れはいかにも80年代のテンポを感じさせます。例えばダーク・ヘルメットがローン・スターの行方を探るため部下に命令するとその部下はおもむろに棚から一本のビデオテープを取り出します。それはスペースボールのビデオで、部下曰く「今は公開前にビデオが出る時代」と言いながら再生すると確かにオープニングからちゃんと流れていき早送りして「今」を再生すると画面に「今」の映像が映る…といった具合。とても今の映画では見ることが出来ない、作ることが難しい内容だと思います。しかし頭でっかちになりがちな現代に肩の力を抜いて楽な気持ちで楽しむことも、たまには良いのではないでしょうか。