愛のむきだし

愛のむきだし

『愛のむきだし』とは園子温監督の23作目の作品として製作されたヒューマンドラマ映画である。実話を元にした作品であり、盗撮、レズビアン、女装、自慰行為、新興宗教団体による洗脳等、アブノーマルな題材を軸に、物語が進行していく。237分の大長編映画で、国内外からの評価は高く、2009年のベルリン映画祭での「カリガリ賞」「国際批評家連盟賞」を始めとして、数々の権威ある賞を受賞している。過激なシーンが多いため、Rー15指定。

愛のむきだしのレビュー・評価・感想

愛のむきだし
9

青年よ、愛をむきだせ!

園子温監督という人物は、ヒジョーに作品の質にムラがある。「作品の質の振れ幅がひどい映画監督ランキング」なんてのがあったら堂々の1位だろう。そして、「愛のむきだし」は園子温監督作品の最高品質と言えよう。
この作品は音楽、構成、テーマ、キャラ、どれをとっても最高である。3時間半というかなり長い上映時間であるが、この作品にのめり込んでいる間にあっという間に過ぎる。
特筆すべきはキャラクターだ。聖母にしか勃起しない西島隆弘、キリストとカート・コバーンしか男として認めない満島ひかり、カルト教団に染まった安藤サクラ。この3人を基軸に物語が進むのだが、よく言えば非常に個性の強い、悪く言えばかなりマンガチックなキャラクター達ばかりだ。青年漫画のようなキャラクター設定は思春期の子達には刺さるものがあるだろう。また、演技が荒削りでフレッシュでながらにも光るものがある。満島ひかりが聖書を引用するシーンと安藤サクラの最後のシーンは日本映画の名シーンと言っても過言ではないであろう。ここに更にゆらゆら帝国のサイケデリックなロックがかかることで、時には荒々しく時にはアンニュイな思春期ならではの雰囲気を更に強くしている。構図やストーリーの節々には園子温の「愛とは何か」という問いや聖書のメタファーが散見され、それもまた青年心をくすぐるものがある。
少年よ、大志を抱け!青年よ、愛のむきだしを観ろ!愛をむきだせ!

愛のむきだし
9

満島ひかりの出世作

09年公開の、園子温監督、西島隆弘主演の映画です。上映時間は237分と長めです。満島ひかりは主人公が恋愛感情を抱く高校生役です。
・あらすじ
主人公の本田悠(西島隆弘)は、厳格な神父の父(渡部篤朗)のもとで育ち、父に懺悔して関心を持ってもらうために、様々な罪になることを行い、父親の関心を繋ぎとめておこうとしますが、父親は愛人と宗教にしか興味がなく、悠は孤独なままでした。しかしながら、パンチラ盗撮をするようになると仲間ができ、そこで様々な人と出会います。
その仲間に女装させられて外出していた時に、偶然、公園で不良とけんかをしている尾沢洋子(満島ひかり)を見て、魅了されます。そして彼女と共にその不良たちと戦い撃退します。悠も洋子もお互いに恋心を持ちます。洋子もまた、偏った家庭で育ち、愛情を知らない少女でした。
しかし洋子が父の愛人の娘だったために、それ以上は進展しませんでした。
そして新興宗教のゼロ教会が悠の家族に近づいて、洋子にその勧誘役の女コイケ(安藤サクラ)が自分が女装していた悠だったと騙して、洋子たちを入信させます。
・見どころ
神父である父親に懺悔する罪を犯すために、悠は様々なことをしますが、普通の高校生なので、あまりできることが無く、そのためパンチラ盗撮を始めますが、そこで様々な盗撮テクニックを身に着けていきます。そこを西島隆弘さんは面白く演技しています。
さらにもともとはアイドルユニットで活動していた満島ひかりさんですが、アイドル出身とは思えないような演技力をみせます。
監督の園子温さんは、グラドルだった神楽坂恵さんや芸人だったでんでんさんなど、もとは俳優でなかったひとに演技に目覚めさせるのが上手い人のようです。
映画評論家の町山智弘さんも、本作品を大変気に入っているそうです。
まだ見ていない人は、ぜひどうぞ。