青年よ、愛をむきだせ!
園子温監督という人物は、ヒジョーに作品の質にムラがある。「作品の質の振れ幅がひどい映画監督ランキング」なんてのがあったら堂々の1位だろう。そして、「愛のむきだし」は園子温監督作品の最高品質と言えよう。
この作品は音楽、構成、テーマ、キャラ、どれをとっても最高である。3時間半というかなり長い上映時間であるが、この作品にのめり込んでいる間にあっという間に過ぎる。
特筆すべきはキャラクターだ。聖母にしか勃起しない西島隆弘、キリストとカート・コバーンしか男として認めない満島ひかり、カルト教団に染まった安藤サクラ。この3人を基軸に物語が進むのだが、よく言えば非常に個性の強い、悪く言えばかなりマンガチックなキャラクター達ばかりだ。青年漫画のようなキャラクター設定は思春期の子達には刺さるものがあるだろう。また、演技が荒削りでフレッシュでながらにも光るものがある。満島ひかりが聖書を引用するシーンと安藤サクラの最後のシーンは日本映画の名シーンと言っても過言ではないであろう。ここに更にゆらゆら帝国のサイケデリックなロックがかかることで、時には荒々しく時にはアンニュイな思春期ならではの雰囲気を更に強くしている。構図やストーリーの節々には園子温の「愛とは何か」という問いや聖書のメタファーが散見され、それもまた青年心をくすぐるものがある。
少年よ、大志を抱け!青年よ、愛のむきだしを観ろ!愛をむきだせ!