ラララ(漫画)

ラララ(漫画)のレビュー・評価・感想

ラララ(漫画)
9

「普通」に疲れた時に世界が広がる作品

あらすじ:主人公桐島士郎(24)はリストラされてバーで焼け酒をしていると、知らない美女の石村亜依(28)に「うちで働かないか」といわれその場で契約書にサインする。しかしそれは契約書ではなく婚約届。桐島士郎は専業主夫としての生活を始める。
この作品は「普通はこうでしょ」「大人はこうあるべき」といったような固定観念に悩まされている人にピッタリです。作品内に、親戚一同が集まる新年会を行うシーンがあります。桐島士郎は主人公の婚約者であり雇い主の石村亜依とともに出席します。そこで手の付けられない親戚の子供に胸を殴られます。普通なら人の家庭に首を突っ込むなと言われたり、大人なんだから許してやれと思われます。しかし石村はすかさずビンタを返します。子どもであろうと一人の人間として扱い「私はお前がきらいだ」と言い放ちます。嫌なやつはどんな風になるかをその場で示しているのです。ここがこの作品の魅力で、普通や一般的に良しとされていることを正すのではなく、我慢なんてせずに自分の道を貫いているだけで変わったことはしていないのです。我慢して普通を装う世界も正しいのかもしれませんが、自己を出していく世界はもっと素晴らしいと思わせる作品です。

ラララ(漫画)
9

いろんな家族があったっていいじゃない

『ラララ』は金田一蓮十郎作の『ヤングガンガン』に掲載されていた漫画で、単行本は全10巻。
サラリーマンの主人公がある日リストラに遭い、酔っ払って出会った美人の女性医師と勢いで結婚するところから始まる「専業主夫」ストーリー。
この医師は顔もスタイルも抜群だが、とにかく「変人」。家ではとにかく裸族という時点でかなりの変人。
そんな「変人」との同居生活から、働くとはなにか、結婚とはなにか、家族とはなにか──。
この考え方は自分の固定観念? それとも世間的な「普通」なのか? 「普通」ってなに?? 主人公を通じていろんな気づきを読者が得られる作品になっている。
家族にはその家族それぞれの理由があり、いろんなかたちがある。
漫画には児童養護施設出身者・LGBT問題・DVといろんな人たちと問題が出てくるが、それを重く、深刻になりすぎないよう描かれているそのバランスの良さが絶妙。
またこのぶっ飛んでいていかにも「漫画だから」と思ってしまう主人公たちの設定も、「もしかしたらこういう夫婦、どこかにいるかも」と、読んでいるうちにきっとどこかに実在しているかのような、リアリティの持たせ方も評価したいところ。
「多様性」という言葉が多く使われる、平成から令和の時代らしい作品だ。