スーパーカブ

スーパーカブのレビュー・評価・感想

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スーパーカブ
8

カブに興味がないあなたこそ見るべき!

『スーパーカブ』は自動車メーカーのホンダが『スーパーカブ総生産1億台記念作品』として作られた作品である。
原作は小説で著者はトネ・コーケン。小説が出てから半年ですぐに漫画になり、アニメ化もした作品だ。

両親を亡くしてしまい、友達も趣味も何もかもがない少女・小熊。
地元のバイク屋からいわくつきの中古のスーパーカブを破格値で手に入れてから物語は始まる。
小熊の生活にスーパーカブという色が加わったことで、周りがガラッと変わっていく。
大切な友人ができたり、バイクの悩みや楽しみ・快適に乗るために思案したり…
それとともに彼女を取り巻く人間模様も変化し、小熊は戸惑いながらも順応していく。

この作品は孤独な少女×スーパーカブという珍しい組み合わせを軸に描いていく作品である。
孤独な少女である小熊が何もなかった過去では味わえなかった様々な出来事を、
『スーパーカブ』を通してどのように感じ、思い、考えていくかという変化を楽しむ作品だ。
作品の設定上、大きなアクションなどは皆無。
しかし、カブの排気音などバイク周りにこだわっていて『スーパーカブ』というバイクに
徐々に興味を持てるようになるのが大きな魅力の一つである。

バイクやスーパーカブにまったく興味がないあなたにこそ是非読んでほしい作品である。

スーパーカブ
7

女子高生がカブと出会うことで成長する姿が見れます。

小熊という女の子が主人公のアニメです。山梨県北杜市を舞台としているので、ゆかりのある方には見覚えのある風景がよく出てきます。
小熊が高校生になり、スーパーカブと出会うことから物語は始まります。最初はカブのことなんて何も知らないし、友達も趣味もない小熊でしたが、カブの手入れをしていくことで段々と成長していきます。カブを通じて初めての友達ができたり、バイトをしてみたり。友達は礼子と言いますが、礼子はかなりのカブ好きな女の子です。富士山にカブで登ろうとする回にはドキドキさせられました。そんな礼子に影響されてか、小熊もカブに乗って乗り遅れた修学旅行のバスを鎌倉まで追いかけるなど、最初の頃とは見違えるほどアクティブになっています。小熊と礼子の些細なやりとりは、女子高生らしい微笑ましい内容が多いので、ゆったりとした気持ちでアニメを見ることができます。のほほんとした雰囲気で、大口開いて笑うようなガサツな女の子たちではないので、誰でも見やすいアニメです。一話一話を丁寧に作り込んでいる印象があります。ただ、少年漫画のようなアクティブな展開はないので、そういうアニメを求めている人にはあんまりおすすめできないアニメなのかなと感じました。日常アニメが好きな方はハマると思います。

スーパーカブ
9

アニメ『スーパーカーブ』の魅力

トネ・コーケン著の『スーパーカブ』というライトノベルを原作にしたアニメが、2021年4月7日~6月23日 にかけて全12話で放送された。
もしも、貴方がこの放送を見ていないのであれば、「強く勧める!今すぐ見るんだ!」とまでは勧めないが、ぜひ見てほしい。
わざわざ紹介するには理由がある。この作品の良さは、「地味」にあるのだ。
作品中にバトルがあるわけでもない、ラブストーリーがあるわけでもない、しかし、心に染みるのだ。
主人公は、高校2年生のとても物静かな小熊という少女なのだが、わけあって一人暮らし。
アニメの女子高生といえば、友達と集まって「アイドル!アイドル!」と大騒ぎしそうなものだが、このアニメの主人公の小熊ちゃんには何にも楽しいことがない。とことん、楽しいことがない。
アニメの第一話が始まって数分、私は「コレ、面白くなるんか?」と心底思ったが、その後で、その小熊ちゃんが出会ったのはタイトルにある「スーパーカブ」だった。
そして、スーパーカブに乗るだけ。そんなアニメなのに、実に心に染みるのだ。
無為に流れる時間の描写が心に染みるのだ。
何にも楽しいことがない人生を生きる小熊ちゃんだから、スーパーカブが特別に輝くのだ。
よそのアニメなら、ここから仲間がたくさんできる展開だが、このアニメは違う!
ストーリーが進んでも、たったの二人しか友達が増えない。しかし、そういう作りの作品だからこそ、ストーリーに引っ張られて役割を果たすだけのキャラにならず、リアリティのある友達との描写が生まれるのだ。
知り合って仲良くなっていく過程に描写される「無為に流れる時間」が視聴者の心に染みるのだ。
派手な大冒険はないが、スーパーカブは小熊ちゃんの人生を素敵なものに変えた、人生の意味を買えた宝ものなのだ。
ぜひ、貴方にも無為に流れる地味な静かなこの物語を体験してほしい。
かっこつけて自分を強そうに見せる必要はないのだ。
そんな穏やかに気持ちになる全12話を、ぜひ見てほしい。