スーパーカブ

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スーパーカブ
9

アニメ『スーパーカーブ』の魅力

トネ・コーケン著の『スーパーカブ』というライトノベルを原作にしたアニメが、2021年4月7日~6月23日 にかけて全12話で放送された。
もしも、貴方がこの放送を見ていないのであれば、「強く勧める!今すぐ見るんだ!」とまでは勧めないが、ぜひ見てほしい。
わざわざ紹介するには理由がある。この作品の良さは、「地味」にあるのだ。
作品中にバトルがあるわけでもない、ラブストーリーがあるわけでもない、しかし、心に染みるのだ。
主人公は、高校2年生のとても物静かな小熊という少女なのだが、わけあって一人暮らし。
アニメの女子高生といえば、友達と集まって「アイドル!アイドル!」と大騒ぎしそうなものだが、このアニメの主人公の小熊ちゃんには何にも楽しいことがない。とことん、楽しいことがない。
アニメの第一話が始まって数分、私は「コレ、面白くなるんか?」と心底思ったが、その後で、その小熊ちゃんが出会ったのはタイトルにある「スーパーカブ」だった。
そして、スーパーカブに乗るだけ。そんなアニメなのに、実に心に染みるのだ。
無為に流れる時間の描写が心に染みるのだ。
何にも楽しいことがない人生を生きる小熊ちゃんだから、スーパーカブが特別に輝くのだ。
よそのアニメなら、ここから仲間がたくさんできる展開だが、このアニメは違う!
ストーリーが進んでも、たったの二人しか友達が増えない。しかし、そういう作りの作品だからこそ、ストーリーに引っ張られて役割を果たすだけのキャラにならず、リアリティのある友達との描写が生まれるのだ。
知り合って仲良くなっていく過程に描写される「無為に流れる時間」が視聴者の心に染みるのだ。
派手な大冒険はないが、スーパーカブは小熊ちゃんの人生を素敵なものに変えた、人生の意味を買えた宝ものなのだ。
ぜひ、貴方にも無為に流れる地味な静かなこの物語を体験してほしい。
かっこつけて自分を強そうに見せる必要はないのだ。
そんな穏やかに気持ちになる全12話を、ぜひ見てほしい。