ハドソン川の奇跡 / Sully

ハドソン川の奇跡 / Sully

『ハドソン川の奇跡』とは、日本で2016年に公開されたヒューマンドラマ映画。2009年に実際に起きた“ハドソン川の奇跡”と言われたUSエアウェイズ1549便不時着水事故と、その後の知られざる真実を描いている。俳優・監督として活躍を続ける名匠クリント・イーストウッドが監督を、主演を名優のトム・ハンクスが務めている。英名タイトルは、機長の愛称でもある「SULLY」。第40回日本アカデミー賞最優秀外国作品賞を受賞。

ハドソン川の奇跡 / Sullyのレビュー・評価・感想

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ハドソン川の奇跡 / Sully
9

"奇跡の生還劇"の真実を描いた傑作

2009年に発生したUSエアウェイズ1549便不時着水事故、通称「ハドソン川の奇跡」を題材にしたヒューマンドラマです。
実話をもとにした映画制作に定評のあるクリント・イーストウッドが監督を務め、名優トム・ハンクスが主人公の機長チェスリー・サレンバーガー(サリー)を演じました。
監督は実際に事故に関わった人物を本人役で登場させるなどリアリティを追求しており、その手腕は今作でも見事に発揮されています。
この作品には物事の見方や在り方を考えさせられました。
機長サリーは不時着水で乗客を救いますが、NTSB(国家運輸安全委員会)からは乗客を危険に晒したと追及されます。
冬の川に不時着水することは生存が絶望的ともいえる状況のため、別の視点から見ると物事は違って見えるというメッセージ性を感じました。
また、英雄として称えらえることが必ずしも人の幸せと呼べず、有名となり注目されることで今までと違う日常を強いられることの辛さには衝撃を受けました。
メディアの存在意義についても改めて考えるべきだと思い知らされました。
奇跡や英雄という輝かしい言葉の裏にある様々な苦悩や辛さを感じさせる、ただの感動作とは一線を画す傑作映画です。

ハドソン川の奇跡 / Sully
10

シンプルかつ丁寧にまとめられた作品

実話を元にしたストーリーでしたが、とても良かったです。
機内でのハプニングをメインに描いているかと思っていましたが、事故後の機長の心理描写をメインに描いています。40年の経験、実績からの自信を持ちながらも自分の下した判断に揺れていく機長サリーの心情をトム・ハンクスがとても巧みに演じていました。
私は良い映画でもちょっと中だるみがあって途中飽きてしまったり、この内容で2時間もいる!?とよく思ってしまうのですが、これは1時間30分程で無駄もなく、むしろこの時間でよくこんなに上手くまとめられたなと思う程でした。なので機内のハプニングシーンがメインではないですが飽きることなく、でも何か静かな緊張感みたいなものを持ちながら観ることが出来ます。
私が一番胸を打たれたのは、不時着して乗客が全員脱出した後も誰もいない機内をまだ誰か残っていないか必死に探すサリーの姿です。
誰だって自分も助かりたいはず。たとえ仕事とはいえ赤の他人を自分を犠牲にしてまで守れるのでしょうか?
サリーの使命感と責任感の強さに脱帽しましたが、人間としても本当に素晴らしい方なんだなと感じます。
乗客にとって操縦士の方って普通はアナウンスの声を聞くのみで顔も見ないままですよね。私はよく飛行機を利用するのですが、当たり前に乗っていることを当たり前と思わずに、つい忘れがちな感謝の気持ちを持ってこれから飛行機に乗りたいです。
とても良い映画でした。

ハドソン川の奇跡 / Sully
7

真実はどこにあるのか

あらすじ
2009年1月15日、1549便の飛行機がバードストライクによって両エンジン停止。空港に引き返すことは難しいと判断した機長はやむなくハドソン川に着水。乗組員・乗客、誰一人死者を出さなかった。そのため、この事故を「ハドソン川の奇跡」と称し、全米に知れ渡ることとなった事故のドキュメンタリー映画である。
機長は一夜にしてヒーローとして各種メディアが取り扱ったが、後日行われた事故調査委員会で予期せぬ報告を受けた。それは再度事故と同じ状況でシュミレートを行ったところ、近隣の空港に着陸できた、ということであった。あえて川に着水させたことで、155人の命を危険にさらしたのではないか?と働きかけられる。機長はヒーローなのか、否か。
レビュー
あまりに有名な事故が題材のため、見るまではあまり期待していなかった。しかし、あの事故にこんな側面があったのか、と驚かされる内容になっている。機長が自分の判断は間違っていなかったと断言できる人物だったら、ここまでの面白みはなかったが、一人の機長が担うには重すぎる責任を背負い、自信・葛藤・不安……さまざまな感情が描かれている。この作品を通じて、責任とは何かを考えるきっかけとなった。