きみの瞳が問いかけている

きみの瞳が問いかけている

『きみの瞳が問いかけている』とは、2020年に公開された日本の恋愛映画である。監督は三木孝浩で、2011年の韓国映画『ただ君だけ』のリメイク版として制作された。日雇いの仕事で食いつないでいた元ボクサーの篠崎塁は、ひょんなことから目が見えない柏木明香里と出会う。次第に惹かれ合い交際を開始する2人だったが、塁と明香里の過去にはある残酷な真実が秘められていた。この作品は、過酷な運命の中でも互いを想い合う気持ちを貫き通し、やがて奇跡を起こす男女の姿を描いた物語となっている。

きみの瞳が問いかけているのレビュー・評価・感想

きみの瞳が問いかけている
9

罪について

三木孝浩監督らしい、清楚で奥深く、精神性の高い映画。
暴力シーンが出てきても、それが必要不可欠な大切なシーンだと思える。ただのアクションを見せたがっているとは、決して思わない。罪は、誰もが生きている間に大なり小なり起こしてしまう。その償いや、その後の生き方について語られている。また、人生の途中で盲目になると、何気なく見ていた家族の顔、庭に咲いている花などは細かく思い出せなくなるというのも、切なさを感じざるを得ない。
主人公のプロボクサーの男性、そして彼に巻き込まれた盲目の女性の出会いは、良縁なのか悪縁なのか。罪意識を強く持って生きてきた2人が出会うことで人生の清算がはじまっていく。
最終的には、自分を許すことが、自他共に守ることへと繋がる。聖なる教会やシスターの言葉がキーとなる。クライマックスでは、離れ離れになった2人が、愛犬の行動や懐かしい音楽、思い出の場所などに導かれて、本当の再会を果たした。三木監督の、ストーリーの繋がりを感じるたびに感動するカットがふんだんに詰め込まれている映画である。

きみの瞳が問いかけている
9

お互いを思う切なさ

主人公二人の純粋さや相手を思う気持ちにとても感動する作品。目が見えない明香里とある過ちを起こしてしまったことでキックボクサーを辞めざるを得なかった塁。最初の出会いは駐車場の管理室。お互いを知らないままであった二人はある出来事を通し急接近する。明香里の天然さにクスッとする場面があったり、塁のふとした優しさだったり最初の方はほっこりする物語。だけど物語の中盤から徐々に悲しい共通点が見つかり物語は変化していく。塁が知ってしまった事実は二人の関係性を脅かすものであった。彼女が知らない事実を自分だけが知っている、そのどうしようもない感情から彼女に償いたいという思いが募っていく塁。そして危ない賭けに出てしまう。彼女を傷つけると思い離れる塁と彼の優しさにどんどん惹かれ一緒にいたいと思う明香里。その二人の視点で見るととてつもなく切なくなる。お互いがお互いを思っているのにどうして一緒に入れないのだろう。一旦は別々の道に歩き出した二人が、最後の20分でまた交差する。その最後のシーンは号泣間違いなしです。塁が力強く握りしめた拳の意味を知った時きっとあなたも涙する…。BTSの主題歌が良いタイミングで流れそれもきっとあなたの涙を誘うことでしょう。

きみの瞳が問いかけている
7

わたし/ぼくの瞳(め)が見つめている。ただ君だけを

オリジナルは2011年の韓国映画『ただ君だけ』。
監督は三木孝浩。
吉高由里子と横浜流星のW主演。
韓流ラブストーリー&恋愛映画の名手&美女とイケメンという、これ以上ないくらいの組み合わせ。
話の方も然り。

将来有望視されながらも、過去に犯した罪でキックボクサーの道を絶たれた塁。
心を閉ざして生きるある日ひょんな事から出会ったのが、明香里。彼女は不慮の事故で視力と家族を失いながらも、明るく前向きに生きていた。
惹かれ合う二人。塁も再びキックボクサーの道に挑戦する。
だが、明香里の失明の事故と塁の過去の罪にはある接点が…。

幾ら元ネタが韓流ラブストーリーとは言え、ここまでドベタか!
美男美女が出会って…ラブラブ満ち溢れた一時。
が、急転直下。
純愛と悲恋。
あり得ないシチュエーション、展開。
途中で何となく分かってきたが、二人のまさかの接点。
そしてそれを知った時…明香里が塁との接点を知った辺りで終わったら余韻残る悲恋ストーリーだったが、その後も出し惜しみ無いくらいのラスト・エピソードでハッピーエンド。
運命の究極の愛。
もう、ここまでくるとファンタジー!
でも、最近久しくこういうTHEメロドラマ!を見ていなかった気がするので、何だかんだ見ちゃったね。

海辺のシーンや部屋のカーテンから差し込んでくる美しい光の演出。三木監督の映像美や繊細な演出はいつもながら健在。
主演二人は好演。
吉高由里子の盲目演技は見事。役作りとして実際に目の不自由な人に会って話を聞いたり、目隠しして日常生活を体験。ナチュラルに明香里という役の心情を表現。
吉高が“明”ならば、横浜流星は“暗”。罪を背負った青年の苦しみを寡黙に体現。また、中学時代に極真空手の世界大会で優勝した事もあるらしく、劇中のキックボクシング・シーンではキレのあるアクションを披露。
二人のやり取りはコミカルであったり(出会った頃、目が見えない分他は何でもわかると言いつつ、塁を“おじさん”呼ばわり…)、甘くもあったり、切なくもあったり、本当に主演二人が作品を魅力的に支えている。
他キャストでは、塁のコーチ役のやべきょうすけ。この人は気のいい兄貴分が合う〜。
それから、“すく”も。

演者の好演や映像は素晴らしいが、先述の通り設定や話の流れは、よくもまあ恥ずかしげもなくやったもんだ。
せっかくキックボクサーとして再び軌道乗ったのに、愛する人の為にまた裏の世界に戻るなんて、オイオイ…。
クリスチャンとか裏世界の地下格闘技試合とか、邦画では全くとは言わないけど、ちと違和感。
何よりラスト・エピソード。ハッピーエンドであるけれど、あんなに蛇足に感じるくらい描くかね…??

ツッコミ所や難点は多々あるけれど、見えなかった世界に光が差し込む。
罪は償える。
結び付けた愛。
タイトルは“きみ”や“問いかけている”となっているが、こう感じた。

わたし/ぼくの瞳(め)が見つめている。ただ君だけを。

きみの瞳が問いかけている
9

純度の高いラブストーリー!

目の不自由な女性(吉高由里子)と、過去の過ちに翻弄される元キックボクサー(横浜流星)のラブストーリー。
駐車場でのバイトをきっかけに出会った2人が次第に恋に落ちて行くのだけど、そこには切ない運命が待っていて…というお話で、テンポの良い展開が心地よく、あっという間の2時間だった。
とくに2人が恋に落ちてからのラブラブシーンがとても美しくて、役者さんのビジュアルなどはもちろん、その雰囲気も全てひっくるめて肯定できるような幸せな演出が最高。
純粋な2人の気持ちが伝わってきて思わずキュンとしてしまった。
普段ラブストーリーを見ない人にもおすすめしたい!
2人には切ない運命が待っているわけだけど、その壁にどうやって向き合うか、が丁寧に描かれていた。
後半、横浜流星君が一生懸命になるシーンには思わず心打たれる。
ボロボロになる横浜流星もこれまたかっこいい…!
最後の最後まで驚きの展開が詰まっているし、BTSの主題歌もあいまって作品の世界観を強調させるような爽やかな仕上がりになっているので、丸ごと楽しめるかと!
まっすぐに生きる登場人物たちの心情に寄り添いながら、最後には温かい気持ちになれるような作品。