さよならくちびる

さよならくちびるのレビュー・評価・感想

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さよならくちびる
10

ハルレオの魅力から抜け出せません

ハルとレオはもうすぐ解散することを決めている。ハル役の門脇麦とレオ役の小松菜奈は目を合わせることもないままで、三人でいてもマネージャーの成田凌がひとりで喋っているようですらある。ふたりがなぜ険悪なムードなのか、説明はないまま物語は続く。
この映画は説明が少なく、観ている人の想像に任せている部分が多い。答えは分からないけれど、そもそも若い頃に仲間にイラ立つなんてハッキリとした理由がないことも多いと思い知らされる。
ライブが始まると、たちまち映画を観ている人までハルレオの虜になってしまう。美しいメロディーと、ふたりの歌声。ぴったり合ったふたりの旋律と透明感が耳に心地良い。歌詞もやけに心に残るなあと思っていたが、それもそのはず、「秦基博」「あいみょん」が主題歌と挿入歌を担当しているとのこと。
菅田将暉さんとの結婚が決まった小松菜奈さんの魅力を、存分に引き出している映画だと思う。ミステリアスな部分と、少女のような部分のバランスが天下一品である。
門脇麦の歌声は初めて聞いたが、申し分ない。思わずハルレオの音楽をダウンロードしてしまった。何回リピートして聞いても耳に心地良く、ずっと聞いていたいとまで思う。
映画そのものだけでなく、音楽も良い一本でした。

さよならくちびる
6

ライブハウスの空気

ライブハウスのシーンが魅力的な映画でした。
アコースティックギター弾き語りのユニット「ハルレオ」と、ふたりを支えるローディーの3人でまわるラストツアーとその道中のストーリーです。
3人ともそれぞれ心に小さい影を抱えながら、一生懸命生きている姿を応援したくなりました。
ライブシーンが印象的で、観客や演者をアップで映すよりも、ライブハウスのフロアの中心や後方から、観客も映るようなカットが多く、自分もライブを見ているような気分でした。
自分自身、ライブハウスでライブを見ることが好きなので感じたのかもしれませんが、ホールとは異なるライブハウスならではの音の響き方や音の近さのようなものが表現されているのが、みどころであり、おすすめです。
二人の歌う曲は、秦基博、あいみょんが楽曲提供していて、曲自体もかなり良かったです。
秦さん、あいみょんさんの曲を、小松菜奈と門脇麦の声で聴けるのはかなり貴重だし、二人ともきれいな声で、楽曲も楽しめました。
ギターを弾いたり、タンバリンを叩く成田凌も色気があってかっこよかったです。
小松菜奈、門脇麦、成田凌、3人の演技がとても自然で、ファンの方はもちろん、そうでない方も見て損はないと思います。

さよならくちびる
9

儚く切ない映像、人物、物語

ルックスはピカイチでファンから人気の高いレオと、作詞作曲、歌声と音楽の才能が溢れるハル。
2人を支えるマネージャーとしての立ち位置にいるシマ。
レオがダメ男に引っかかったりが原因でハルレオ解散の危機が何度か訪れるが、それでも乗り越えてきた3人。
だが、我慢に達したハルとレオはついに解散の意思をシマに告げる。
解散を止めるシマだったが、2人の意思は固かった。
この物語はハルレオ解散ライブから始まる。

ストーリーの強弱はあまりなく、穏便に進んでいくような感じです。
映像は綺麗で静かな雰囲気があります。
ですが、ハルとレオを演じる門脇麦さんと小松奈々さんの歌声は力強くどこか儚げで、思わず泣きそうになります。

世間で多く取り上げられているLGBTについても触れている作品です。
といっても、決してお粗末に触れているわけではなく、とてもとても繊細に触れられています。
ですので、バンド経験がある人はもちろん共感部分があるかと思いますが、もっと深く踏み込んだ部分で共感できる人が多い映画だと思います。
当事者である私は気持ちが痛いほど分かるので、話が進むほど共感しかなく涙が溢れました。

恋の行きつく先は、結ばれるのか結ばれないのか。
友情が行きつく先は、仲良しでいる事だけなのか。

ハル、レオ、シマは解散ライブで何を思うのか。

ラストに関しては腑に落ちないと思う人が多いかもしれません。
ですが、物語を振り返ってみると、この作品だからこそありなのかなと思います。