青野くんに触りたいから死にたい

青野くんに触りたいから死にたいのレビュー・評価・感想

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青野くんに触りたいから死にたい
8

刺さる台詞が多い

可愛らしくメルヘンチックな絵柄で、最初はギャグ、コメディの類の作品かと思っていた。しかし、次第に本格的なホラーとなり、その中でヒロインと青野くんの悲しい生い立ちに触れ、読者の心を揺さぶる生々しい人間ドラマを形成していった。
「優しい奴ほど人を傷つける方法をたくさん知ってるんだよ」と言っていた青野くんは、傷つきながら優里に惹かれていき、「青野くんがこの世界から消えてしまうのが一番正しいことだなんてこの世界ってクソじゃんねぇ」と笑って言った優里は命をすり減らしながら、精神的にはどんどん強く人間らしくなっていく。 2人の過去や地域の因習のようなものの謎が少しずつ分かる一方で、この先の展開は全く読めなくて、青野くんと優里がどうなっていくのか予想がつかない。 2人が現世で結ばれる未来は来ないのだとしても、どう決着をつけるのか今後も見守っていきたい作品である。
比較的恵まれた環境で育った藤本くんは正義感が強く、読者寄りのキャラクターだと思うが、5巻で優里との決定的な隔たりを描かれてしまっているので、彼女と付き合える展開にはならなそうで切ない。 初期には言いたいことをズケズケ言うキャラクターだったが、優里を好きになってから思春期らしく悩んでいて、個人的にはとても応援したくなる存在である。2番手の男性キャラクターが魅力的な漫画は読んでいて面白いと思う。

青野くんに触りたいから死にたい
8

ぞっとさせる演出が上手い!怖いけどクセになる幽霊と人間の恋物語。

「青野くんに触りたいから死にたい」は月刊アフタヌーンで連載中の青年マンガである。
主人公の刈谷優里は同じ学年の青野龍平に告白し、2人は付き合い始めるが、2週間後に青野は交通事故に遭い亡くなってしまう。
しかし幽霊となった青野が優里の前に現れ、2人は付き合い続けることに。
主人公の優里は内気で天然で、とても一途で、青野もいいやつで、未来がないと分かっていながらつい2人の恋を応援したくなってしまう。
絵柄も、下手では無いがリアルで美麗とかではなく、すごくちょうどいい。話と絵柄がよく合っている。
しかし、お互いに触れ合うことはできなくても一緒にいたい、幽霊と人間のピュアな恋物語…というだけでは無いのが本作品の魅力だ。
なぜ好みの作品だと思いながらも、10段階評価の10にはしなかったのかというと、ちょっと怖いのであまり万人に勧められる作品では無いからだ。
ちょっとというか、結構怖い。ほのぼのしていたり、ギャグかな、というようなシーンもあるのに、ホラーなシーンはとことん怖い。
タイトルもそうだが、他に似ているものがない、独特の世界を作り上げている。
面白いのでおすすめしたいが、どのジャンルを好きな人に勧めればいいのか分からない。
ホラーだけではないし恋愛だけではないし、ギャグっぽさもある。試しに読んでみて、というしかない。
ので、タイトルが気になった方はぜひ試しに読んでみてほしい。私は読んでみて良かったと思っている。

青野くんに触りたいから死にたい
10

触れたいのに、触れられない

まず、タイトルがものすごいインパクト。
一度は聞いたことがある、という方も多いのではないでしょうか。
この作品は月刊誌『アフタヌーン』で連載されている、『椎名うみ』先生の漫画です。
2020年の『次にくる!マンガ大賞』でノミネートされていたり、『第25回手塚治虫文化賞マンガ大賞』では最終候補作として残り、その奇抜な内容、タイトルからSNSでも話題となりました。
さて、この作品ですが、なんとジャンルは『ホラーラブストーリー』。
当初、私は「タイトルに”死にたい”と入っているところから察するに、少しホラー要素があるのかな?」くらいに思っていたのですが、実際読んでみると、背筋がぞくぞくするようなホラーな展開が盛りだくさん。
しかし、大筋はほっこり面白いラブコメディ。
その温度差にもぞくぞくしてしまいます。
主人公優里ちゃんが恋人の青野くんを想うまっすぐな気持ちに、あなたも必ず胸を打たれるはず。
とってもお勧めな漫画です。
ですが、夜に読むのはお勧めできません。
充分に注意してくださいね。

青野くんに触りたいから死にたい
8

純愛依存型オカルト

怖い。色々怖くて1人でお風呂に入れない。何が怖いってシンプルに幽霊。幽霊からの依存と執着が怖過ぎる。なのに主人公たちが愛おしすぎて、応援したくてついつい読んでしまう。そんな、作品です。冒頭で「初めて男の子と喋っちゃった〜わたし彼氏できちゃうかもしれない!」と言うシーンを見たときは、主人公の『優里』はちょっと痛い子なんだと思いましたが、話が進むにつれて、この天然さは家庭環境が作り出したものなんだと切なくなります。何とも思わないように、見ない、聞こえない、言わない。そうしていないと耐えられない状況だったんだと考えさせられます。初めて喋った男の子が恋人に…なんてすごくピュアな恋愛の話のはずなのに、恋人『青野くん』が死んでしまうことで、急にオカルト感が出てきます。普通、恋人が死んでしまう→幽霊になって現れる→幸せ!という図式になりませんか?しかし、この漫画は違います。恋人が幽霊になったことで自分の世界を変えてくれた、唯一の居場所がなくなったことで、2人がどんどん依存関係になっていきます。普通の恋人がするようにキスをしたり触ったりすることを、触れられないがために枕や指で代用するなど、ちょっと笑える部分もあり、心が温かくなります。しかし次の瞬間、悪霊の青野くんが現れ、優里へ物凄い執着心を出してくるので、感情がジェットコースター状態になります。悪霊青野くんは優里の中に入ってこようとします。精神も肉体も傷付くけれど、それでも受け入れてしまう。この人は自分の知っている恋人とは違う何かだけれど、拒否したら突然いなくなってしまいそうな曖昧な存在であることが、より愛おしさと恐怖心を煽ってきます。また、主人公の周りに集まってくる友達もとてもいい味を出しています。見えない心霊現象なども怖がっている当事者に寄り添って居るものとして、接する純粋な姿が心強いです。その純粋さで一緒に2人の幸せへと奔走してくれるので、怖いものが苦手な人でも最後まで読めると思います。

青野くんに触りたいから死にたい
8

好きでいるほどに傷つく二人

この漫画をジャンル分けするのは難しい。高校生のラブストーリーであり、ゾッと震えるホラーであり、いくつもの謎が絡み合ったサスペンスのようでもある。
刈野優里は身近に一人はいそうな女の子。クラスメイトに名前も覚えてもらえてないし、友達らしい友達もいないから体育で二人組を作ると余ってしまう。そんな子が、想いを寄せる『青野くん』に勇気を振り絞って告白したら何とOK。幸せいっぱい、これから二人のラブストーリーが始まる……かと思いきや、付き合い始めてたったの二週間で青野くんは帰らぬ人となってしまう。
しかし物語はここからが本番。なんと幽霊になって帰ってきた青野くん。幽霊でも一緒にいられるだけで嬉しい、そう喜ぶ優里だが、彼は時々人が変わったようにとある要求を始める。

独特な絵柄に苦手意識を持つ人もいるかもしれないが、この絵だからこそ不気味で気持ち悪い空気、溢れる涙や堪える唇といった表情の機微、ちょっとシュールな笑いの場面、全てが豊かに感じられる。
優しい青野くんが一転して恐怖の対象になってしまう、その切り替わりに優里も読者も翻弄される。
初々しくいちゃついた次の瞬間にはクラスメイトが平然と青野くんの身体をすり抜け、「あぁ彼は幽霊だった」と現実を突きつけられる。そんなシーンに何度も寂しさを感じる。

幽霊の自分をコントロール出来ない青野くんと、それでも彼を好きでいつづける優里。
大切にしたいのに傷つけてしまう。守りたいのに危険に晒してしまう。
お互いに想い合い一緒にいたいと願うほど、罪悪感も募ってしまう。
けれどもこれは決して苦しみの物語ではないと思える。そんな中でも二人は確かに幸せを感じているし、放棄せずに道を探している。それに協力しようとする人も現れる。

『青野くん』は何が目的なのか?二人はどうなってしまうのか?
青野くんと優里、そしてそれを取り巻く人々が見つける道を一緒に見てみたいと思える作品。