青野くんに触りたいから死にたい

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青野くんに触りたいから死にたい
8

純愛依存型オカルト

怖い。色々怖くて1人でお風呂に入れない。何が怖いってシンプルに幽霊。幽霊からの依存と執着が怖過ぎる。なのに主人公たちが愛おしすぎて、応援したくてついつい読んでしまう。そんな、作品です。冒頭で「初めて男の子と喋っちゃった〜わたし彼氏できちゃうかもしれない!」と言うシーンを見たときは、主人公の『優里』はちょっと痛い子なんだと思いましたが、話が進むにつれて、この天然さは家庭環境が作り出したものなんだと切なくなります。何とも思わないように、見ない、聞こえない、言わない。そうしていないと耐えられない状況だったんだと考えさせられます。初めて喋った男の子が恋人に…なんてすごくピュアな恋愛の話のはずなのに、恋人『青野くん』が死んでしまうことで、急にオカルト感が出てきます。普通、恋人が死んでしまう→幽霊になって現れる→幸せ!という図式になりませんか?しかし、この漫画は違います。恋人が幽霊になったことで自分の世界を変えてくれた、唯一の居場所がなくなったことで、2人がどんどん依存関係になっていきます。普通の恋人がするようにキスをしたり触ったりすることを、触れられないがために枕や指で代用するなど、ちょっと笑える部分もあり、心が温かくなります。しかし次の瞬間、悪霊の青野くんが現れ、優里へ物凄い執着心を出してくるので、感情がジェットコースター状態になります。悪霊青野くんは優里の中に入ってこようとします。精神も肉体も傷付くけれど、それでも受け入れてしまう。この人は自分の知っている恋人とは違う何かだけれど、拒否したら突然いなくなってしまいそうな曖昧な存在であることが、より愛おしさと恐怖心を煽ってきます。また、主人公の周りに集まってくる友達もとてもいい味を出しています。見えない心霊現象なども怖がっている当事者に寄り添って居るものとして、接する純粋な姿が心強いです。その純粋さで一緒に2人の幸せへと奔走してくれるので、怖いものが苦手な人でも最後まで読めると思います。