軍鶏

軍鶏のレビュー・評価・感想

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軍鶏
7

両親を殺害した少年がもがきながらも格闘家人生を歩んでゆくストーリー

両親を殺害した少年A、成嶋亮。物語は彼が両親殺害の罪で少年院へ投獄される所から始まる。
根は優等生で気弱な性格の亮は、少年院でも不良グループに目をつけられ、性的暴行を受けてしまう。
教育的両親に自我を抑えられ、爆発してしまい犯行に及んだ時の様に、ここでも亮の自我は爆発し、無理やりくわえさせられた不良グループのボスの男性器を噛み千切ってしまう。
さらに目をつけられ、追いつめられる亮の前に現れたのが、少年院にて空手を教える黒川健児であった。
黒川健二に空手の訓練の方法を教えてもらい、少年院の中で着々と自信を鍛え上げ、いつの間にか亮の右に出るものが居なくなる。
そして出所後、テレビで話題の格闘技、リーサルファイトの試合を観戦し、トップ選手菅原に憧れ、いつしか拳を交えたいという欲求にかられる。
その衝動が抑えられず、菅原の車が出入りする駐車場で待ち伏せするも、言葉を交わす前に彼の強さを感じ取ってしまい、話しかける事すらできずに終わる。
しかし訓練し、工夫し、様々な方法で菅原にアプローチをかけ、ついにリーサルファイトでの対決が実現。
しかし、あえなく敗退した亮は、リング上ではなくストリートファイトを再び申し込み、勝利。
菅原を植物人間へと貶めてしまう。
その後も親殺しという十字架を背負いながら、黒川に教わった空手を武器に、様々な相手と拳を交え、自身を高めていくというストーリー。
優等生が両親を殺害してしまう時、どのような心境だったのか、また、その十字架を背負って生きていくという事にはどのような苦痛が伴うのか、共感できる部分はあるのか、等、非常に人生について、人の命について考えさせられる作品となっています。

軍鶏
9

生き死にをかけた戦いがスリル満点で面白いです。

両親を殺害して少年院に入った少年、成島亮が本作の主人公です。成島亮はその気弱な性格から少年院でひどくいじめられます。そんななかで空手と出会い自らを守るために技を磨いていきます。
この漫画の見どころはスリル満点の格闘シーンです。
作中では様々な場所、様々な武器での格闘シーンが多く登場します。自らの身を守るために戦う主人公にとって勝利こそすべてであり、勝つためには手段を選びません。なのでその場にあるものはなんでも利用します。砂や石ころ建物の柱にいたるまで使います。どんな戦いをするのかまったくもって予測不能です。私は読み進める中で何回も驚かされました。ぜひ自分の目で主人公の戦いを見てみてください。
この漫画は、社会や格闘技の暗闇に焦点を当てた漫画です。そんな暗闇で主人公は必死に生きようとします。人間の欲望が渦巻く中で、誰にも頼ることなく自分の力で生き抜こうとする主人公の姿に感動しました。命の危機が迫っても誰も助けてくれません。頼れるのは自分の力だけで、戦いに負けることは死に直結しかねない。相手との圧倒的な差があっても勝つことでしか生き延びられない、そんな常人には考えられない狂気の世界を垣間見ることが出来る、数少ない作品の一つだと思います。