十三機兵防衛圏 / 13 Sentinels: Aegis Rim

十三機兵防衛圏 / 13 Sentinels: Aegis Rim

『十三機兵防衛圏』とはヴァニラウェアが開発し、アトラスが発売したゲームソフトだ。PlayStation 4版が2019年、Nintendo Switch版が2022年に発売された。ディレクターは『プリンセスクラウン』や『朧村正』などに携わった神谷盛治が務めている。物語の舞台は架空の日本だ。5つの時代に点在する13人の主人公それぞれの視点を美麗な2Dグラフィックで描くドラマチックアドベンチャーゲームである。主人公たちは強大なロボット「機兵」に搭乗し、未知の敵と対峙していく。

十三機兵防衛圏 / 13 Sentinels: Aegis Rimのレビュー・評価・感想

十三機兵防衛圏 / 13 Sentinels: Aegis Rim
6

バトルパートが少々残念

これは1980年代の日本を舞台に、「機兵」と呼ばれるロボットに乗って戦うことになった十三人の少年少女が繰り広げる物語だ。
この作品は彼らが何故機兵に乗り戦うことになったかが描かれる「アドベンチャーパート」、機兵に乗って町を守る「バトルパート」の二つで構成される。
もう一つ「アーカイブパート」も存在するが、こちらはいわゆる事典だ。
ただしこの事典からしか得られない情報も多々あり、物語の真相を追うためには読んだ方がいい。
このゲームのレビューはアドベンチャーパートに割かれることが多いので、バトルパートについて書いていく。
バトルパートはいわゆるタワーディフェンスだ。難易度が選べるので、苦手な人でも問題なくプレイできる。
ただし一番簡単なモードだと完全に作業になってしまい、かつ省略できないのが難点である。
なおアドベンチャーパートがいらない人もいるかと思うが、そこは諦めるしかない。
面白いので頑張って読んでいただきたい。
というよりも、アドベンチャーパートに興味がないならこのゲームはお勧めしない。
緊迫感や戦略性もあり面白いのだが、タワーディフェンス系のゲームの中で際立っているとまでは言えず、
このゲームの特徴であるはずの機兵が戦っている姿を見ることはできないからだ。
バトルパートの画面は基本的に点と線で表現される。時々キャラのカットインが入るがそれだけだ。
戦い方によってはPS4が処理落ちするほどの細やかな処理がされているため仕方がないのだが、
せっかくデザインされた機兵が戦っているところを見たかったというのが本音である。
タワーディフェンスを楽しみたいだけならば、他のゲームでも差支えないだろう。

十三機兵防衛圏 / 13 Sentinels: Aegis Rim
10

万人にオススメしたい、ADVの名作

アドベンチャーゲームが好きで興味本位でプレイしてみたが、予想を大幅に上回る面白さで、のめり込んでしまった。
製作元であるヴァニラウェアは他作品もとにかくCGが綺麗なのだが、本作品も例外なく美しい。
絶妙な光の表現や、昭和のレトロ感等々、見事に表現されており背景を眺めているだけでも楽しかった。
肝心のシナリオも、よくまぁここまで複雑怪奇なストーリーを上手くまとめあげたなぁという印象。
伏線の回収も見事で、キャラクターの選択順によっては二転三転する展開に見事に翻弄された。
ぞっとするような展開も、泣けるような展開もある。全てがシナリオの出来の良さに集約されていると思う。
また、あまり理解できなかったところは、「究明編」というアーカイブパートを見れば、時系列で確認することができるので便利。
肝心のキャラクターもそれぞれ個性があり、元ネタがあるのでルーツ探しも楽しい。
最終的にはどのカップリングもどのキャラクターも全員好きになった。
人数がいるので、各自推しキャラが必ず一人は見つかると思う。
「崩壊編」パートのバトルは、アドベンチャーはやりたいけどバトルが苦手な人向けに難易度設定ができるので、親切だと思う。
是非続編やスピンオフのDLCをお願いしたいが、次作に集中しているようなので厳しいか…。
控えめに言ってもアドベンチャーゲームの傑作。この世界観を何度でも反芻したいと思う。

十三機兵防衛圏 / 13 Sentinels: Aegis Rim
10

十三機兵防衛圏はあなたに満足感、そして喪失感を与えることだろう(ネタバレあり)

世界はすでに崩壊し、人類は滅亡していた。

当時の科学者たちは、人類という種を残すため、種を複数の宇宙船に載せ、どれかが安住の地につくことを願い、打ち上げた。
どれかひとつでも、人類にとって安住の地にたどり着けることを願って。

朧村正、ドラゴンズクラウンなどで知られるヴァニラウェアが開発を担当し、2019年にアトラスからPS4用ソフトとして発売されたタイトルが、この十三機兵防衛圏だ。

本タイトルは、13人の少年少女が巨大ロボットに乗って、怪獣たちと戦っていく作品となっている。
この作品のストーリーはあまりに膨大で濃密だ。
13人もの登場人物が、1945年、1985年、2025年、2065年、2105年の5つの時代を背景に、各々の思いを抱えたまま、ドラマを繰り広げていく。

この5つの時代に分かれてゲームが進んでいくが、実は全て作られたもの。
各時代と思われていたのは、実は各コロニーで、そこに住んでいる住人たちもすべてAIが作り出した虚像だった。

主人公と呼べる人物はおらず、13人のプレイアブルキャラクターが、各時代で繰り広げるドラマで、このゲームのアドベンチャーパートは成り立っている。

プレイヤーは、この13人のキャラクターになって、各ステージで選択肢を選びながらゲームを進めていく。

各キャラクターそれぞれの行動が複雑に絡み合い、ストーリーは進んでいく。
けしてハッピーエンドとは言えないストーリーだが、プレイヤーは新鮮な驚きと、途方もない満足感、そしてゲームをクリアした後に膨大な喪失感を得るだろう。

近未来SFモノの傑作といえば昨今ではデトロイトを思い浮かべるが、それに匹敵するレベルが国内のゲーム会社から発売されて新作ゲームとしてプレイできるということに、幸せを噛みしめるべきだろう。
この十三機兵防衛圏というゲーム、少しでも気になっているのであれば今すぐ体験版をやってみるべきだ。
そして、自分に合いそうだと思うのなら是非このゲームを購入してみよう。
この歴史に残る傑作ゲームは、必ずあなたを満足させてくれるだろう。