正統派ハイファンタジーグルメ作品
若者のハイファンタジー作品はいくつかあるものの、本作はめったにない58歳の老騎士バルドが主人公の作品です。
バルドは生まれ育った守るべき故郷が危機に瀕した際、問題を解決し救う代わりに、自分の全財産を投げ出し、放浪の旅に出ました。老いた先にある死出に行くつもりの旅は、やがて世界を救う旅になっていきました。
主人公が若者のときにありがちな葛藤の描写が少なく、むしろバルドは若者を導く立場の主人公でした。
よくあるハーレム要素が一切存在しないうえ、だますような神から力を授かる能力ではなく、長年の経験と技術に重きを置いているため、とても説得感がありました。
何より最も特徴的なことは、グルメ漫画と思ってしまうほど、食事の描写がとても詳しく濃厚でした。食欲を刺激させる想像しやすい表現の巧みさは、ほかの追随を許さないでしょう。
全く現代と異なる感嘆の表現や、長さの単位、食事の調味料まで、徹底したこだわりは、まさに「ハイファンタジー」と呼ぶにふさわしいでしょう。
個性豊かな仲間たちとのバルドの世界を救う旅は、あるときは戦いの苦難、あるときは人々との笑い、あるときはそれぞれの地方の美味しい食事がありました。『辺境の老騎士』は自信をもってオススメできる作品です。