祈りの幕が下りる時

祈りの幕が下りる時のレビュー・評価・感想

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祈りの幕が下りる時
9

すばらしい映画

東野圭吾の小説を映画化したものです。小説もすばらしかったですが、この映画では、主人公、加賀恭一郎の内面や心情が見事に表現されています。
また、浅居博美役は、桜田ひよりさん、飯豊まりえさん、松嶋菜々子さんと3人の女優さんたちが演じていますが、違和感なく入り込めます。14歳から重たい過去を背負ってきた浅居博美の人生を松嶋菜々子さんがうまくまとめ上げていました。加賀と浅井博美の直接対決シーンは、とても緊張感があり、見ているこちらも力が入ってしまいます。その後、加賀が真相に気付いたと察してから、浅居博美は自分の母親に会いに行き、長年の思いをぶつけるシーンは、松嶋菜々子さんの演技に引き込まれます。松嶋さんの関西弁も新鮮でした。
すべての謎が解けた後の、浅居忠雄役の小日向文世さんと松嶋菜々子さんのシーンは涙なしでは見れませんでした。家族として一緒に過ごしてきた時間は短かったかもしれないけど、同じ秘密を共有し、お互いささえあって生きてきた2人にしか分からない絆が感じられました。何回見ても新しい発見があり、あきない映画だと思います。
この映画は新参者シリーズからの完結編になっています。新参者ファンの方は、絶対に見たほうがいい作品だと思います。

祈りの幕が下りる時
8

切なすぎる話。

加賀恭一郎さんが好きなので楽しく見させていただきました。
加賀さんがお母さんを探しているのはなんとなくわかっていました。
しかし、ああこういう経緯で日本橋に来たんだなとわかっておもしろかったです。
そして、そこから広がる事件の切ないこと。とても悲しい気持ちになりました。
金がないのは悲しいことです。
あんな幼い子が、お金のために男のもとに行かなきゃいけなかったのも、
そのため事件に巻き込まれたのもすごく悲しい話です。
娘を守るため、父がとった行動が合っていたことなのかはわかりません。
ほんとはもっと前になんとかしなきゃいけない問題だったのかなと思います。
それでも、あのときとりうる最善の策があれしかなかったのでしょう。
あの親子が歩んできた生活を思うと悲しすぎです。
会いたいのに会えない、会ったとしても公には会えないし、こそこそしか会えないなんてつらいよなと思いました。
お父さん役は小日向さんがしており、すごくよかったです。あの味は彼にしか出せないと思いました。
あの普通さが余計に切なさを醸し出しています。
娘役は松嶋菜々子さんで、やはりあのきれいさ、すっとした感じが素敵でした。
きれいだけど、ちょっと不幸そうな顔もしているので、役にあっていたと思いました。

祈りの幕が下りる時
10

後半、親子の絆に涙が止まりません!

この映画は、東野圭吾原作の「新参者」シリーズ完結編になります。もともと「新参者」シリーズが好きな私ですが、その中でも1番の傑作だと思います。話の流れとしては、ある難解な殺人事件を優秀な刑事が解いていく中で、事件のきっかけにはある父と娘の悲しい過去が浮かび上がって来たというような話です。
事件の背景になる、父と娘の悲しい過去を回想するシーンはずっと涙が止まりませんでした。特に娘が初めて人を殺してしまった後に、トンネルで父に別れを告げられるが娘が泣いて父を呼び戻し、もう一度抱き合うシーンは思い出すだけで涙が出ます。それから、最後に大人になった娘が父を楽にさせてあげようと父の首を絞める悲しいシーンでも、父と娘の強い愛を感じ、たまらなかったです。本当に映画の後半は嗚咽が出るほど泣きっぱなしでした。
この映画の良さは、原作も然り、キャストが素晴らしい点にあると思います。刑事「加賀」役の阿部寛、「娘」役の松嶋菜々子、「父親」役の小日向文世、そして忘れてはいけないのが回想シーンの「娘」役の桜田ひより、飯豊まりえ。とにかく子役の演技も含め、役者の演技に泣かされた映画です。
私が今まで見た映画の中で、文句なしで一番感動的な映画です。非常にお勧めしたいです。

祈りの幕が下りる時
7

原作を読んでいなくても十分楽しめる内容

原作を読んでしばらく経っていたため、「こういう話だったかな」と思えるくらい、あちこちに伏線を張り過ぎずにまとまっていた。
松島菜々子の演技には正直あまり期待していなかったが、ふだんは沈着冷静でありながら内面の激情を抑えた演出家を上手く演じていた。阿部寛演じる加賀の相棒・松宮役の溝端淳平が、加賀は先輩でありながら親戚であるが故に、つい言いたいことを言ってしまったりという微妙な距離感を表現している点が良かった。
捜査が行き詰まっても最後に一気に解けていくのは推理物の映画にはありがちだが、この作品もその種に入るだろう。時間の制約がある中で原作通りに作ることは不可能だから仕方ないが。
特に、浅居博美の担任(及川光博)についての描き方が表面的で、どんな人物だったのかがわかりにくく、原作を読んでいない人にはその後の展開に納得がいかないのではないか。
とはいえ、博美が追い詰められ、ついに加賀と対峙したシーンは、雑にならずに丁寧に作られていて、観ている側にも緊張感がひしひしと伝わってきた。淡々とした加賀の言動がかえって迫力を生んでいる。随所に挿入される日本橋界隈の風景も楽しい。わざとらしさを感じなかった。
エンドロールにもサプライズがあるので、最後まで席を立たずにちゃんと観ていただきたい。

祈りの幕が下りる時
10

事件が解決する度、なぜかハートフルになる作品!

東野圭吾さん著書の推理小説を実写化した作品です。阿部寛さん扮する日本橋の所轄刑事、加賀恭一郎が謎を解いていきます。「新参者」シリーズの最終章といっても過言ではない作品になっております。
「新参者」は、優秀でありながら所轄の刑事をする変わり者の加賀恭一郎が人形町で起こる事件を解決していく小説で、TBSのドラマとしても実写化されました。人間の優しさ、ちょっとした弱さを見抜く加賀恭一郎だからこそ解決できる事件が次々と起こり、推理小説でありながらもホームドラマを見ているような気持ちになれるのが見所でした。
そのシリーズの良さが今回も存分に発揮され、それだけでなく原発現場で働く作業員の過酷な状況なども描かれおり、東日本大震災後の世相を表した場面も盛り込まれています。人間愛だけでなく、世の中の暗い部分にもスポットが当てられ考えさせられます。
今回は、都内のアパートで起きた殺人事件と恭一郎の管轄で発見されたホームレスの焼死体、一見関係のない2つの事件の間に何やら関係が少しづつ見えてきて、というストーリー。ただし、謎解きよりも事件に関わってくる、シリーズで一貫して謎だった恭一郎の母についてが一番の醍醐味になっています。
事件の関係者と思われる松嶋奈々子扮する女性の振る舞いも気になり、事件の謎よりもとにかく人の心の動き、それが最大の見所な作品になっています。