祈りの幕が下りる時

祈りの幕が下りる時

『祈りの幕が下りる時』(いのりのまくがおりるとき)とは、東野圭吾による長編小説および、それを原作とした実写映画作品。原作小説は2013年に単行本、2016年に文庫版が刊行された。2018年には主演に阿部寛を迎えた実写映画が公開されている。東野が手掛ける人気推理小説のシリーズ『加賀恭一郎シリーズ』の第10作にあたり、シリーズの主人公である加賀の母親が初登場。『赤い指』『卒業』で触れられている失踪の理由が明かされたことが、ファンの間で大きな話題となった。このミステリーがすごい! 2014年版では10位、2013年の週刊文春ミステリーベスト10では2位と大ヒットを記録。2014年には、第48回吉川英治文学賞を受賞した。とあるアパートで40代女性の腐乱遺体が見つかったことを皮切りに、同時多発的に発生した事件の謎が絡み合うという、王道のミステリー展開ながら、東日本大震災の原発事故発生後の世相も強く反映されている。

田中さくらのレビュー・評価・感想

祈りの幕が下りる時
7

原作を読んでいなくても十分楽しめる内容

原作を読んでしばらく経っていたため、「こういう話だったかな」と思えるくらい、あちこちに伏線を張り過ぎずにまとまっていた。
松島菜々子の演技には正直あまり期待していなかったが、ふだんは沈着冷静でありながら内面の激情を抑えた演出家を上手く演じていた。阿部寛演じる加賀の相棒・松宮役の溝端淳平が、加賀は先輩でありながら親戚であるが故に、つい言いたいことを言ってしまったりという微妙な距離感を表現している点が良かった。
捜査が行き詰まっても最後に一気に解けていくのは推理物の映画にはありがちだが、この作品もその種に入るだろう。時間の制約がある中で原作通りに作ることは不可能だから仕方ないが。
特に、浅居博美の担任(及川光博)についての描き方が表面的で、どんな人物だったのかがわかりにくく、原作を読んでいない人にはその後の展開に納得がいかないのではないか。
とはいえ、博美が追い詰められ、ついに加賀と対峙したシーンは、雑にならずに丁寧に作られていて、観ている側にも緊張感がひしひしと伝わってきた。淡々とした加賀の言動がかえって迫力を生んでいる。随所に挿入される日本橋界隈の風景も楽しい。わざとらしさを感じなかった。
エンドロールにもサプライズがあるので、最後まで席を立たずにちゃんと観ていただきたい。