ルックバック

ルックバック

『ルックバック』とは、『ファイアパンチ』、『チェンソーマン』で知られる藤本タツキによる、2021年7月19日に公開された読切漫画。2024年に押山清高監督で劇場アニメ化した。
小学生の藤野歩は、自作の4コマ漫画を学級新聞に載せてもらうのが趣味だった。しかしある時、引きこもりの京本という同級生の圧倒的画力に激しい衝撃と劣等感を抱く。画力で勝てないと挫折する藤野だったが、その京本が自身の漫画の大ファンだと知って有頂天になる。2人はコンビで漫画家を目指すも、その道は次第に擦れ違い、断絶していく。

ルックバックのレビュー・評価・感想

ルックバック
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時を超えた芸術と友情の物語!映画『ルックバック』の深層

映画『ルックバック』は、過去と現在、そして未来を繋ぐ深いメッセージを持った作品です。この映画は、ある事件をきっかけに散り散りになった旧友2人の物語を描いており、彼らが自分たちの過去に向き合いながら再び絆を深めていく様子が描かれています。

主人公の1人は成功した画家であり、もう1人は彼の影に隠れたままの存在でした。彼らの関係性は、過去の共有経験と互いに対する深い理解によって、時間を超えて変化し続けます。

『ルックバック』は、その映像美と緻密なストーリーテリングで、観る者を時間の流れに引き込みます。映画は、キャラクターたちの内面的な成長と外的な変化を巧みに描き出し、人間関係の複雑さと美しさを浮き彫りにします。特に、主人公たちが直面する困難や選択は、観る者に深い感動を与え、多くの洞察を提供します。

この映画の魅力は、ただの友情物語にとどまらず、それぞれのキャラクターが抱える内なる葛藤や成長の過程をリアルに描いている点にあります。登場人物たちが経験する感情のリアリズムと、それを通じて描かれる人生の様々な側面は、観る者に深い共感を呼び起こします。

また、過去の出来事が現在にどのように影響を及ぼすかを知ることで、時間と記憶の価値について考えさせられる作品です。

ルックバック
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6文字に込められた数多の意味

「ルックバック」という、たったカタカナ6文字に込められた意味を、存分に味わうことのできる映画です。
後ろをみろ、背中をみろ、振り返るなど、様々な解釈ができるタイトルは、シーンが移り変わるごとにその意味を変えていきます。
作者の藤本タツキ先生が映画好きということもあり、原作漫画が映画のような構図を多用していることから、映画映えするシーンがとにかく多い。漫画がそのまま映画になったような、それでいてそのままではない、まさに120%の完成度。特に雨のシーンは雰囲気はそのままに、圧だけぐっと厚みが増したような演出で、全身がぞわぞわとしました。
漫画原作の映画というと、原作改変に賛否が分かれがちですが、この映画は改変はなく合間合間に漫画では描き切れなかった要素を補完しているのもポイントです。
そのため漫画だけではわからなかった登場人物たちの行動や心理が鮮明にわかるようになっています。特に漫画家デビューした後の藤野の背景へのこだわりからくるアシスタント交代希望のシーンのおかげで、より京本の存在、目指していたものの重要性が描かれていると感じました。
それだけに、そこからはじまる悲しい急展開へ観客の感情が引きずられるのではないでしょうか。
エンドロールの余韻も存分に味わい尽くせる映画です。

ルックバック
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こんな漫画があるんだ

本書は宝島社【このマンガがすごい!2022年オトコ編第1位】を受賞したためご存知の方もいるかもしれません。
藤本タツキ先生は「ファイアパンチ」「チェンソーマン」の作者であり、少年ジャンプの読者であるならば藤本先生の作風をイメージできる方もいるかもしれません。私もその一人であり、なんとなく軽い気持ちで本書を読み進めました。
物語が進むにつれて一気に話の中に引き込まれ、口に出た感想は、やっぱりこの人は天才だ。作者はどういうことを伝えたくてこの漫画を描いたのだろう、どうしてこんなストーリーが頭に浮かんだんだろう。読後、そのようなことを考えましたが答えは出ず、ぼんやりとした気持ちが残りました。読み返すのも少し力を入れないとできない、そんな漫画であったと言っていいかもしれません。
少なくとも、私は今まで生きてきてこのような作品に出会ったことがない、出会えてよかったと心の底から思ったことを覚えています。名作だ!いうものではなく、何かよくわからないけれど考えさせられる漫画といってもいいのではないでしょうか。漫画ってこんなに深いんだな、と藤本先生に教えられた気がします。藤本先生、ありがとう。