6文字に込められた数多の意味
「ルックバック」という、たったカタカナ6文字に込められた意味を、存分に味わうことのできる映画です。
後ろをみろ、背中をみろ、振り返るなど、様々な解釈ができるタイトルは、シーンが移り変わるごとにその意味を変えていきます。
作者の藤本タツキ先生が映画好きということもあり、原作漫画が映画のような構図を多用していることから、映画映えするシーンがとにかく多い。漫画がそのまま映画になったような、それでいてそのままではない、まさに120%の完成度。特に雨のシーンは雰囲気はそのままに、圧だけぐっと厚みが増したような演出で、全身がぞわぞわとしました。
漫画原作の映画というと、原作改変に賛否が分かれがちですが、この映画は改変はなく合間合間に漫画では描き切れなかった要素を補完しているのもポイントです。
そのため漫画だけではわからなかった登場人物たちの行動や心理が鮮明にわかるようになっています。特に漫画家デビューした後の藤野の背景へのこだわりからくるアシスタント交代希望のシーンのおかげで、より京本の存在、目指していたものの重要性が描かれていると感じました。
それだけに、そこからはじまる悲しい急展開へ観客の感情が引きずられるのではないでしょうか。
エンドロールの余韻も存分に味わい尽くせる映画です。