ウォーリー / WALL-E

ウォーリー / WALL-Eのレビュー・評価・感想

ウォーリー / WALL-E
9

ただのSFとして考えられない痛烈な風刺映画

2008年公開の、色あせないPixarの名作である。2100年頃、ごみに溢れ荒廃した世界でもはや地球での暮らしは不可能と悟った人間たちが宇宙船で去った後、700年もの間、孤独にかつ健気にごみを処理し続けるウォーリーの姿にまず惹き込まれる。そんなウォーリーの前に現れた、同じロボットではあるが見た目も性能も段違いに最新鋭のイヴ。前半はこの2人の交流が丁寧に描かれており、会話等がないからこそ画面から目が離せない。そして、もはや生命の維持など不可能とされていた地球で芽吹いた新たな命をイヴが認識してからストーリーは動き始める。
ウォーリーがイヴを追いたどり着いた宇宙船では、人間がロボットの恩恵を受けて生きていた。この人間の姿が映画の中で最も強烈だった。コンピュータ制御され動く椅子に乗って移動したり、食べたいものを食べたいときに食べることが可能となったために、人間の運動能力はほぼ無に等しくなりコンピュータにより生かされている状態にあると感じた。不健康そうな体、新たに表示される情報にくぎ付けとなる人々、能動性を失った依存状態にも危機感をおぼえない、むしろ違和感すら感じない社会の形が気味悪く思われてしまった。だからこそ、ロボットにすべて委ねておく楽な生き方ではなく、船長が故郷の復興という道を選択した際にひどく感動した。古い映画と侮ることなかれ。むしろ廃棄問題など多くの課題に直面している現代人こそ見るべき作品だろう。

ウォーリー / WALL-E
9

セリフは少ないけど。

地球にたった一人残されたお掃除ロボが、空からきたロボットと恋に落ちる話です。概要だけは知っていて、内容はあまり知らずに見ましたが、思った以上に深いテーマ、そしてウォーリーの切なさを思い、泣いてしまいました。ずっと一人で、地球にいて、もう戻ってこない人間たちのために掃除していたのかと思うと泣けるし、ウォーリーがイヴと出会い、嬉しそうにしているのは微笑ましくて、不器用な感じでまた、ああ、ほんと一人で寂しかったんだなと泣けました。イヴもなんかツンデレでかわいいです。彼?彼女?が何のために地球に来たのか、最初わからなくてドキドキしました。もし、お掃除ロボを廃棄するためとかだったらどうしようとかいろいろ考えてしまいました。その後、人間が住んでいる宇宙船にウォーリーらは行くのですが、未来の人間の姿がびっくりです。造形的には違ったけど、ドラえもんのブリキの迷宮のやつと同じで、やはり体力はなくなっている設定でした。今よりちょっと前くらいの時代は、未来では自分の力では動かなくなるんじゃと危惧されていたんだなとわかります。本作ではさらに丸くなってて、ある意味キュートだけど、嫌だなと思いました。そこからの展開は波乱の展開でおもしろかったです。セリフは少ない作品ですが、ロボットたちの感情表現は豊かだったし、全然伝わってきました。すごく泣けて、いい作品だなと思いました。

ウォーリー / WALL-E
7

風刺の効いた世界と表情豊かなロボット同士の恋愛感情

この作品ではバッドマンであるブルースもさることながら、ヒースレジャー演じるジョーカーにもスポットが当たっています。
ヒロインであるレイチェルがジョーカーの手によって殺されてしまうところに衝撃を感じました。
アメコミから実写化された映画の多くはスーパーマン、スパイダーマンなど、元は人間ながらヒーローになると驚異的なパワーを持ったキャラクターが多く、悪役が悪いことをしていてそこへ正義のみかたが登場すると、やっと来てくれたという安堵感や安心感があり、退治してくれるという気になります。
それなのにこのダークナイトの中のバッドマンはそれらとは違い、ジョーカーの悪行から人々を救おうとしても手が届かない事が多く、なぜかそこに視聴者側のストレスがかかります。
しかもジョーカーをバイクで息の根を止める事が出来るときも根性がなく、躊躇してしまう。
ジョーカーが生き延びてしまって、そんなだから罪のない一般市民が次々と命を落としてしまうのだ。
ブルースが本拠地でパソコンに向かっていても、バッドマンスーツの改良にしても画期的アイテムではなく、ただ首のところの布を柔らかくして後ろが見れるようにして欲しいという程度。
(リアル世界であればもちろんすごいのでしょうが、他のヒーローものに比べるとという意味で)
さらに本人も自分で体におった傷を縫うなどのシーンがあり、改造人間でもなければバックボーンに医者や博士が付いている訳でもない模様。
より、人間らしい、等身大のヒーローなのだ。
一方でジョーカーも口が裂けて見てくれが気持ち悪く、(過去に奥さんとの関係が原因でこうなった)怪物なのか?と思いきやあれもただの人間だという設定。
そう、実は生身の人間同士の戦いなだけ。
この設定が好きか嫌いかによってこの映画を好む好まないかが分かれてくるところだと思う。
ちょっとじれったく感じるところが、続きが気になって次作品に繋がり親近感がわくのだと思います。