空の境界

空の境界のレビュー・評価・感想

空の境界
10

特別とは何か、普通とは何か。

私は「空の境界」を通して普通というものの異常性を垣間見た気がした。万物の綻びを見た、かつて2つの人格を有した少女「式」、そんな異常な彼女に惹かれる普通であることを望む少年「幹也」、そんな二人を見守るつかみどころのない人形師「橙子」など魅力にあふれた人物が数多く登場する。物語には物の死を見る能力や物を捻じ曲げる能力、浮幽霊となり人々を死に誘う能力、はたまた魔術なんてものを持つものまで現れる。そんな特別な力を持つキャラクターが多い中、式と並ぶ第2の主人公「黒桐幹也」はただ普通であることを望んだ。これが私の眼には異常に映ったのだ。彼は人並みの幸せ以外何も望まない。普通以上も以下も望まない。それはとても異常なことのように感じる。人は、今の状況を見てさらに裕福に、あるいは幸せになりたいから変化を求める。何も望まないということは何もしないということ。何もしないということは何も変わらないということ。普通とは何なのか。特別や異常に囲まれた中、ただ何も望まず、何も変わることを望まなかった彼は本当に「普通」だったのか。劇中の中で普通を望んだ彼こそが「特別」であり「異常」だったのではないか。だとしたら、彼を囲んだ「特別」とは何だったのか。考えれば考えるほど、疑問が浮かぶばかりだ。アニメや漫画に特別や非日常を求めている人には是非とも「空の境界」を見てほしい。異能や魔術などの非日常を持つものではなく、何も持たず、何も望まない私たちの一番身近であるはずの「黒桐幹也」に視点を向けてほしい。きっと、「普通」と「特別」の間に境界なんてないのだろう。

空の境界
10

世界観に侵食される!

重厚で緻密な世界観を持ったこの作品は、原作小説・劇場版アニメ共に引き込まれる魅力を持っています。作品を見たあとの満足感、虚脱感は他作品と一線を画すものがあり誰しもにおススメしたい作品となっています。
原作者はfateシリーズで有名な奈須きのこ先生です。那須先生の作品は根幹の世界観設定が統一されており、圧倒的世界観で心に何かしら残る作品ばかりです。その中で「空の境界」という作品は、魔法の存在が秘匿された現代世界で出会う式という不思議な空気感の少女と黒桐という少年の歪な伝奇ラブストーリーとなっています。
時系列がバラバラで進んでいくストーリーはそこに違和感はなく、1つ1つのストーリーが独立しているにもかかわらず全てが、繋がっている構成に驚かされ一章から最終章まで一気に見てしまう魔力がそこにはあります。
劇場版を手がけるのはfateシリーズの劇場版と同じ制作で、繊細な世界観や空気感を見事に表現しています。戦闘シーンなおいては派手なだけでなく、キャラクターを最大限引き出す手法が凝らされており、美しさや荒々しさ表情や空気から心情を感じることができます。個性的なキャラクターの一人一人が魅力的でどのキャラクターも大好きになる作品なので是非ご覧いただきたいです。