空の境界

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空の境界
10

特別とは何か、普通とは何か。

私は「空の境界」を通して普通というものの異常性を垣間見た気がした。万物の綻びを見た、かつて2つの人格を有した少女「式」、そんな異常な彼女に惹かれる普通であることを望む少年「幹也」、そんな二人を見守るつかみどころのない人形師「橙子」など魅力にあふれた人物が数多く登場する。物語には物の死を見る能力や物を捻じ曲げる能力、浮幽霊となり人々を死に誘う能力、はたまた魔術なんてものを持つものまで現れる。そんな特別な力を持つキャラクターが多い中、式と並ぶ第2の主人公「黒桐幹也」はただ普通であることを望んだ。これが私の眼には異常に映ったのだ。彼は人並みの幸せ以外何も望まない。普通以上も以下も望まない。それはとても異常なことのように感じる。人は、今の状況を見てさらに裕福に、あるいは幸せになりたいから変化を求める。何も望まないということは何もしないということ。何もしないということは何も変わらないということ。普通とは何なのか。特別や異常に囲まれた中、ただ何も望まず、何も変わることを望まなかった彼は本当に「普通」だったのか。劇中の中で普通を望んだ彼こそが「特別」であり「異常」だったのではないか。だとしたら、彼を囲んだ「特別」とは何だったのか。考えれば考えるほど、疑問が浮かぶばかりだ。アニメや漫画に特別や非日常を求めている人には是非とも「空の境界」を見てほしい。異能や魔術などの非日常を持つものではなく、何も持たず、何も望まない私たちの一番身近であるはずの「黒桐幹也」に視点を向けてほしい。きっと、「普通」と「特別」の間に境界なんてないのだろう。