東京物語

東京物語

『東京物語』とは、小津安二郎監督による1953年に公開された日本映画である。主演は笠智衆と原節子。
上京してきた年老いた両親とその家族の諸相を描き、親と子の在り方や繋がりを通して日本の家族制度を冷徹に見つめた傑作であり、日本と日本人を描いた日本映画の最高峰のひとつとされている。この作品には低い位置にカメラを固定するローポジションなどの「小津調」と呼ばれる独特の技法が駆使されている。原案は1937年のレオ・マッケリー監督のアメリカ映画『明日は来らず』であり、小津監督はこの映画を洋の東西を問わないより普遍なものにした。
作品は国内外で高い評価を受けており、英国映画協会が発表している「映画監督358人が選ぶ史上最高の映画」で第1位に選ばれた。キネマ旬報ベストテンにもたびたび選出されている。本作は世界中で様々なオマージュ作品を生み出しており、日本では何度もテレビドラマなどでリメイク、舞台化もされている。

東京物語のレビュー・評価・感想

東京物語
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戦後すぐの日本映画には名画が多い。

日本映画「東京物語」は、世界的にも評価が高い。
監督小津安二郎の世界的評価も高く、ご存じの方も多いとは思いますが、詩情豊かなその映像は、わかる人にとってはこの上なく貴重な映像の数々です。

小津安二郎監督は、「東京物語」をはじめ、「麦秋」「彼岸花」「秋刀魚の味」「大学は出たけれど」などの数々の名作を生み出し、多くのファンがいて、日本のみならず世界的に名高い監督です。
その映像は、人物描写では、独特のローアングル、また登場人物の会話のやり取りの独特の間(ま)などで観るものをひきつけ、味わい深いです。

「東京物語」についても、主人公の老夫婦の夫のほうに扮する笠智衆と、登場人物との掛け合い、セリフのやり取りは、味わい深いという言葉だけでは及ばないぐらいの、深い印象を与えます。
ストーリーは、わりとシンプルです。広島・尾道に住む老夫婦が、子どもたちに会いに、東京へと旅をするという話です。

子どもたちはみな、もう大きく、独立していて働き、所帯を持っているものも多い。ただ、老夫婦(老父、老母)が東京に遊びに来るといっても、子どもたちはみな忙しく、老夫婦に久しぶりに会うのは、うれしいとはいえ、皆少し困惑気味。なかなか、東京見物に連れて行ってあげられない。
ただ、息子の嫁(息子は戦死)だけが暇を作って、老夫婦を東京見物に案内してくれる。この息子の嫁役が、知る人は知る名女優・原節子です。

笠智衆と原節子の、掛け合い、会話のシーンは、観客に深い印象を与えると思います。
ごく一部ですが、「東京物語」についてお話させていただきました。

東京物語
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戦時下を生きる夫婦の物語

主人公は戦時中の日本陸軍のパイロットで、最前線勤務からテストパイロットの任を受け帰国したところから物語は始まります。
テストパイロットとして新型機の様々なテスト飛行をこなす一方、一緒に暮らす奥さんとの日常が描かれていて、当時の生活がどのようなものだったのかも分かります。
戦時中を描いた作品と言うと、やはり悲惨な内容を想像しがちですが、この作品は当時の日本の軍用機や運用の紹介が多いです。悪化していく戦局を憂う主人公の思い、そして奥さんとの日常生活を中心に描かれているので戦闘シーンも少なく目を背けたくなるような描写はありません。どちらかと言えば、夫婦のやり取りを読んで“クスッと”する事が多い作品です。
テストパイロットという事もあり、様々な日本陸軍の戦闘機が登場し、その機体のことが詳しく描かれているので、戦史やミリタリー、特に日本軍の航空機が好きな方は読んで絶対に損はない作品とお勧めできます。
一方、戦史にもミリタリーにも興味が無い方にも現代とは異なる夫婦の日常を描いた作品として読んで頂ける作品です。徐々に戦況が悪化し、夫婦が住む東京にも空襲が始まる中、夫婦がどう生きていくのか?そして、生き延びることが出来るのか?
上下巻の2巻で構成されているので最後まで一気に読むことが出来る良作です。