自分はなんのために生きているんだろうと思い続けているみんなに読んでほしいマンガ
母親をなくしてしまった少女、朝を葬式の親戚の嫌な雰囲気から救うかのように引き取った作家、35歳独身の槙生。彼女は朝の母親の妹でした。彼女は人と生きる事が苦手でコミュニケーションを極力取らないような生活をしていました。
しかし、落ち着いているとはいえ、感情をむき出しにぶつかってくる女子高生にとまどい、また温かくはないが相手を非難しない言葉でいなしていきます。この空気感がなんとも言えません。
私はあなたの寂しさを埋めることはできない。これはどんなに親しくても、遠いと感じている人でも、同じ事のように感じました。他人に自分の乾いた心の砂漠を潤すことはできない。オアシスの水につかっても融けあわないことと同じだと朝は気づきます。彼女の母親を失った寂しさを埋めることは出来ないときっぱり言う冷たさと誠実さ。それが槙生なりの彼女(エッセイ?の中では犬と表現している、自分とは違う理解できない人懐っこいものとしての比喩と取っています)への向き合い方なのです。
彼女は自分のテリトリーには朝を入れないながらも、自分なりに朝を養い、言葉を返していきます。それは、槙生が嫌悪してきた朝の母、もとい自分の姉とは違う、私はあなたを正当に扱うし、何も押し付けないというスタンスで。彼女は朝の言葉の節々に姉から言われた嫌な言葉たちをちらつかせながらも、私はそうならない、この子をそう扱わないと懸命に向き合い言葉を紡ぐその一つ一つが今まで息苦しく生きてきた私達が言ってほしかったような、息がしやすくなるような言葉ばかりなのです。
どの話も読んだあと何か水の底のような落ち着いた気持ちになれる作品で、今まで読んできた中で1番おすすめと言っていいほどの良作です。