死なない亜人が現代で生き残るにはどうすればいいのか
腕を切ったりしてバラバラにしてもプレス機で圧殺しても殺してしまえば死ぬ前の健全な肉体に戻る。現代で圧倒的に少数の亜人はどの国にとっても貴重なサンプルであった。車の衝突実験の座席に座らされテストをされたり、新しい新薬を人間に投薬できたりとその死なない能力は多方面に使われていた。しかし、佐藤という人物が中心となり亜人の反逆がはじまる。この佐藤という人物はいい意味で狂っていて物語を2転、3転させていくのがなんとも面白い。佐藤は生粋の戦闘狂で今自分が置かれている状況、能力を冷静に判断して常に読者の想像する一歩先の作戦を展開してくる。主人公の永井圭も佐藤に対抗するため様々な作戦を展開してきて、なるほどと思わせるものばかりなのだが常に佐藤はその先をいっている。物語の節々で佐藤はどうしようもないピンチに自ら飛び込んでいくのだが、そんな状況も楽しむように切り抜けてしまう。絶体絶命の状況でも、佐藤ならなにか仕掛けてくるはずといつの間にか読者は佐藤を心のどこかで応援してしまっていることに気づくだろう。こんなに魅力的な悪役はなかなかいないと思う。そして、主人公の永井圭も魅力的な人物である。まだ学生ではあるが、冷酷に見えるほど合理主義者でその知識の量と頭の切れはそこらの大人では到底敵わないだろう。そしてそんなに頭の良い主人公でも読者と同じ目線で佐藤の作戦に翻弄されることになる。佐藤の次の手が毎回気になって、いつのまにか虜になる作品である。