遊牧民好きは必見の「乙嫁語り」
「英国恋物語 エマ」の森先生が描かれた漫画、「乙嫁語り」。乙嫁とは「かわいいお嫁さん」の意味で、その名の通り美しくたくましい遊牧民のお嫁さん「アミル」が主人公です。この漫画の見どころは、とにかくマニアックなアジア、中東の遊牧民の文化を綿密に描ききっているところ。一コマ一コマ書き込まれた刺繍からは作者の猛烈な熱意が伝わってきます。動物のデッサンも最早一コマが絵画のようです。女性が集まってパンを焼くところ、馬上弓で狩りをするところ、結婚式のための衣装を作り上げるところなど、まるでそこで一緒に生活している感覚に陥るほど丁寧に描かれています。逆に、ストーリーは劇的には動きません。主人公アミルやイギリスからの旅人スミス中心としながら、その周りの人々の生活やちょっとした事件の話がゆっくりと続きます。なので、例えば派手な戦闘シーンや、エマのようなドラマチックな恋愛劇を求めるとやや物足りないと感じるでしょう。この漫画の楽しみ方は、いかに遊牧民の生活に溶け込むか、背景に描かれた調度品や食べ物などの細かいところに興味を持てるかにかかっています。もとから遊牧民に興味がある、アジアや中東の文化や服飾が好きという人には、その辺の旅行ガイドよりも生き生きと現地の生活が伝わってきて面白く感じるでしょう。