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圧倒的な世界観・小さな料理人
森の中に住む三頭身の小人と動物たちが交わす架空の日常生活を丁寧に描いたコミックです。物語を楽しむというよりは、目で見て愉しむエッセイのような内容で、絵本や写真集をゆっくり眺めるときに感じるような楽しみを感じます。特筆すべきは画面の隅々まで圧倒的な画力で描く描写力です。背景の森や擬人化された昆虫や動物が一本一本の線で描かれ、正確なパースが見る者を蠱惑的な世界に引きずり込みます。料理や食事風景は見ているうちに味覚さえ感じてしまうほどの表現力で、たとえて言うなら宮沢賢治の物語に没入するような感覚です。軸になるのはハクメイという元気な女の子と、ミコチというおとなしい女の子の掛け合いです。ハクメイはどちらかというとガテン系、器用な技術を持つミコチは料理やファッションの技を持っています。この二人の知識がものすごく深いので、読んでいるうちに知らない世界に導かれるような納得感を得ることができます。何度も読み返すうちに、それまで気が付かなかった仕掛けや、描き込みを発見すると、なんだか得した気分になれます。仕事や勉強につかれたときや、今日はなんだか調子が出ないときに開くと癒されます。オーガニックな生活にあこがれる人に推したいシリーズです。