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ヴェノム君、ずいぶん人になついたね
しばらく見ないあいだに、ヴェノム君もずいぶん人間っぽくなったものである。とにかく宿主たるエディへの愛が半端ない。記者としてのエディに「いい仕事」をさせるためにスクープネタを掴んでやるわ、捜査官ばりの事件解明をしてみせるわ、元恋人との仲をとりもってエディに元気になってもらおうとするわ、律儀に食事制限して人(脳)は食べずに我慢してみせてる一方で代替食として飼ってるニワトリにはペット的な愛着を持つわで、中身は完全に人間化してしまったご様子。ほほえましく見られるシーンは随所にあり、とても愛着の湧くキャラクターにはなったが、そのぶん、映画トータルのパワフルさや破格感は半減したようにも感じる。
物語にパンチを感じづらいもう一つの要因は、敵キャラクターの描写にもある。特にシュリーク。ヴェノム以外はノーマルな人間しかいない世界観かと思っていたところになんの説明もなく突如わいた異能者。映画冒頭の物語の雰囲気から、マイノリティの苦悩を抱えた悲劇のヒロイン的な立場になるのか、その能力ゆえに物語全体にゆさぶりをかける存在になるのか、などと思いきや、後半の立ち回りっぷりはただのボニー&クライド。しかも、軽く相棒に迷惑かけたあとにあっさりと退場、一体このキャラにどう感情移入したらよいのか最後まで視点がふらふら定まらないまま終了してしまった。
恐ろしさがなくなったぶん、可愛いヴェノム君をたっぷり堪能できる作品。トム・ハーディのひとり芝居は見ごたえあり。