10
唯一無二に出会いたかったら。
ブランキー・ジェット・シティ 。その名の通りどこかの街の物語かと思うようなグループ名。そう、彼らの存在や彼らの奏でる音楽は1つの街そのもの。
街には日々戦いや悲哀、出会いや別れが繰り返されていて、そのそれぞれに人と人の物語があるが、彼らの音楽を聴いていると、人間の深い生命の物語が絵に描かれたように伝わってくる。そんなグループを僕は他に知らない。
いい歌を奏でるグループはいくらでもある。切ない歌やハッピーな歌。しかしそれらは人間のほんの一部分の切り取りにすぎず、人間の真の姿ではない。人間とは本来脆く壊れやすくカッコ悪い。その中で足掻き、もがき、ボロボロになりながら、今にも壊れそうな思いを抱えて生きている。
ボーカル浅井健一の壊れそうなハイトーンボイスを聴くと、人間の脆さや狂気を思い出させる。ベース照井のベースラインは泣いたり叫んだり、感情が入り乱れている。そしてドラム中村が奏でる音は、壊れた心を何とか繋ぎ合わせて手足をバタつかせているように切ない。
一つ一つは壊れかけた旋律で、決して綺麗とは呼べない3人の言葉にも似た音楽が重なり合った時に、壊れかけていた旋律は壮大な街の物語に変化する。たった3分の曲を1つ聴いただけでも長編映画を観たような気持ちになる、唯一無二のミュージシャンだ。