aikoにしかできない歌いまわし
シンガー・ソングライターとして当代きっての実力を誇るaiko。その魅力のひとつは唯一無二の独自な歌詞描写にある。
『えりあし』では、「困った顔が見たいがゆえに泣き真似をした」、「愛しくて仕方なかったからぶってしまった」。女性のリスナーからすると、全く同じ経験はなくとも、女心として「分かるよなぁ」と思わず共感するような歌詞が並ぶ。男性目線でも、これらの描写を「意味がわからない」と一刀両断できる人はいないと思う。「季節に逆らい想い続けて」というのも、“時は進んでいるのに想いは逆に強まっている”という、言い得て妙の表現。
『蜜の味』というドラマの主題歌『ずっと』では、「あなたに出逢えた事が あたしの終わり」と、"あなた"との出逢いのインパクトをこれ以上なく強い表現で言い回す。一人称は"あたし"という、極めて女性的な表現でありながら、「優しく笑う向こうに 絶望があったとしたら 全部あたしにください」と言い切り、相手を受け止められる強さがギャップを生んでいる。
同じくドラマ主題歌『戻れない明日』では、「あたしはあなたじゃないから全てを同じように感じられないからこそ 隣で笑っていたいの」と、相手を想うがゆえの心境がポップなメロディに絶妙に乗って歌われている。
ライブや一部の曲で垣間見える、コテコテの関西弁も魅力。