なぜここまで人気なのか?人気アニメ「鬼滅の刃」レビュー
言わずと知れた名作。田舎町で暮らす少年、炭次郎が、ある日家族を鬼に殺され、妹の禰豆子を半妖の鬼にさせられてしまう。人を鬼に変え、食料にすることで生き永らえている鬼舞辻無残を倒すため、炭次郎は鬼狩りとして剣術を学び、様々な鬼に立ち向かっていく。
続編「無限列車編」が「千と千尋の神隠し」の興行収入を超え、また二期「遊郭編」を控えている本作。その魅力は、ズバリ3つ。プロも唸るレベルの映像クオリティ、世界観をリスペクトしたバックミュージック、耳に残る力強いセリフの数々です。
作者はジャンプ漫画「ジョジョの奇妙な冒険」をリスペクトしているそうで、能力に頼らない戦闘のトリック、呼吸法など、いくつかジョジョを連想させる要素が、本作にも出てきます。しかし「鬼滅の刃」で最も注目されているのは、その台詞回し。「生殺与奪の権を他人に握らせるな」「判断が遅い!」「お前も鬼にならないか?」など、パロディに使えそうなセリフがいたるところに散りばめられていて、他の漫画にない存在感を放っています。
音楽面に関しても、日本謡曲を意識した三味線、合唱、和太鼓などの和楽器を用いて、大正時代の日本の世界観を確たるものにしています。不気味な鬼の恐ろしさをより際立たせている演出には、鳥肌が止まりません。
主人公炭次郎、妹の禰豆子、気弱な善逸、猪突猛進な伊之助。4人のテンポのいいギャグシーンもとても面白く、飽きずに見続けられます。一期の終盤から「柱」という位のキャラクターが出てきますが、その柱達も想像以上に丁寧に描写されています。鬼によって人生を変えられた若い戦士たちの葛藤、悩み、夢、願望など、人が人生を乗り越えていくにあたって、必ずぶち当たる壁を、どうやって壊すことができるか。その答えを、本作を通して学ぶこともできると思います。
また、味方サイドだけではなく、敵サイドもとても魅力的。十二鬼月の蜘蛛一家、インターネットでもプチバズリを起こした「無残のパワハラ会議」を始め、様々な魅力的な鬼が現れます。無残の血によって使うことができる「血気術」という魔術。その圧倒的な力で、主人公達を絶望の淵に追い詰めます。鬼たちは実に非道な手段を使ってくるのですが、ただ憎たらしい敵で終わるのではありません。彼らにもかつて人間らしく生きていた時代があり、苦しい人生をなんとか凌いでいて、そこを無残に救われた犠牲者でもある、というのが本当に悲しいのです。特に鬼が自分の過去を語るシーンでは、必ず涙を誘われます。
騒がれているから、有名になりすぎて逆に胡散臭い。「鬼滅の刃」をそうスルーする人も、中にはいるのではないかと思います。しかしこの名作を観ないのは、あまりにも勿体ないと私は思うのです。漫画では絵の粗さを指摘されることも多い「鬼滅の刃」ですが、アニメだとそこまで気になりません。未読の方でも入りやすいので、気になる方は是非アニメを観るのをオススメします。日本アカデミー賞アニメ部門を受賞した、話題作「無限列車編」からチェックしてみるのも、乙な楽しみ方ですね。