マイナスイオンのような歌声とつい口ずさんでしまう歌詞
スピッツはほとんどテレビに露出することがありませんよね。1990年代後半から現在に至るまで、約30年近く活動しています。スピッツの歌詞は、まるでファンタジー作品を読んでいるかのような、不思議な言葉たちが組み合わさって出来ています。
例えば有名な所では『空も飛べるはず』。「幼い微熱を さげられないまま 神様の影を恐れて 隠したナイフが 似合わない僕を おどけた歌で なぐさめた」という歌詞には主語もなく、そのまま素直に読むとメッセージ性はありません。しかし、こういうところにスピッツの良さが出ています。恋愛の歌、恋心を歌っているのですが、ストレートに「好きだ」、「愛している」とは歌わず、意味深な歌詞で不思議な気持ちにさせてくれます。
『恋する凡人』にもあります。曲の最後に「走るんだどしゃ降りの中を ロックンロールの微熱の中を 定まってる道などなく 雑草を踏みしめていく これ以上は歌詞にできない」とあります。「これ以上は歌詞にできない」とは、究極に気持ちが到達したことをぴったり表した歌詞だと思います。リズムもどんどん速くなっていって、まるで走っているかのような爽快感があります。
そう、スピッツの歌はボーカルの草野正宗さんの歌声が透明感にあふれているのです。マイナスイオンが口から流れているような。そして、難しい歌ではないので、誰でも耳に残るものが多いです。歌詞に意味を持たせてメッセージをこちらに押しつけるのではなくて、あえて想像させてくれる、自由で気持ちのいい歌を歌っているのがスピッツです。