ナイアガラのような重層的大瀧詠一的音楽
大瀧詠一氏は日本の音楽家で、「Tシャツに口紅」、「探偵物語」、「風立ちぬ」、「怪盗ルビー」、「うれしい予感」、などの数多くのヒット曲を発表したが、残念ながら平成13年に亡くなっています。彼の代表的な音楽はナイアガラサウンドなどと評されるものもある、極めて印象的なもので、多くのファンを獲得しました。上記のように映画のタイアップ曲もあり、アルバムには、「GO GO NIAGARA」、「A LONG VACATION」、「DEBUT AGAIN」 などがあります。ひとつひとつの曲が、たしかに大瀧詠一氏のものであるという印象をまといながら、それぞれ独自のアイデアで作られており、聞くものを飽きさせません。例えば「Tシャツに口紅」という曲は、夜明けの色の移ろう時間に、ナイアガラサウンドを基調として、海辺で並んでいる恋人2人の切ないやりとりが表現されている。その情景を、次々と色が変わっていく朝日に照らされた光景として、ひとフレーズづつ丁寧に描き出していく様は、まさに重奏的な表現にピタリとはまっている。また一方では、コミカルな楽曲もこなすことができ、その出色と言えるのがアルバム「EACH TIME」の中の「恋のナックルボール」です。屋根のない球場の外野席で、恋人に対する男性の一方的な恋の駆け引きを、ストレートやナックルボールなどの球種で楽しく表現しています。多彩な表現が楽しめる多くの楽曲は一聴の価値があります。