少女漫画と少年漫画のいいとこ取り
あまりにもすごいブームなため、遅ればせながら読んでみてはまりました。吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)という作者による漫画。ちなみに、作者は女性だそう。内容は、「鬼にされた妹を人に戻すため、主人公が人食い鬼を退治する『鬼殺隊』に入って鬼と戦いながら旅をする」という話。話の構造はシンプルだが、鬼を含む登場人物たちの設定がかなり詳細なため、濃密で重厚な作品となっており、多くの人が言うように一人一人が主人公のようで感動する。ホラー漫画のような絵のタッチ、少女漫画のような繊細な心理描写、少年漫画特有の戦闘シーン、緊張状態で差し込まれるコントのようなギャグ。いろいろな要素を混ぜ込んでおり、今までのジャンプで人気のあった作品とはまた違う作品だと個人的に思う。何より、描き方や見せ方の芸術性が高いと思う。下手にネタを無理やり出して続けてグダグタになり、評価が悪い形で連載終了となるのがかなり残念なので、そのあたりはよかったのではと思う。個人的に好きなキャラは、主人公とよく行動を共にする、嘴平 伊之助(はしびら いのすけ)。猪の頭を被っており、不遜な態度は、スラムダンクの桜木花道のようで、見ていて痛快。彼の性格は、強者に怯むということがなく、主人公が窮地のときにも、とても頼もしく映る。もう一人、主人公とよく行動を共にする我妻 善逸(あがつま ぜんいつ)は、ヘタレだが眠ると真価を発揮するという能力の持ち主なのだが、そのために、強敵が現れても、眠りながら(鼻提灯をぶらさげながら)移動するとか、ふざけてるとしか思えない。また、胡蝶姉妹が一人一人命を繋いで一人の鬼を倒す場面であったり、鬼殺隊側の人物で、「恋」を技にする人物がいたりするのは、男性作家では思いつかない発想だろう。思うに、この作者は少年漫画と少女漫画のいいとこ取りを行っており、それがあらゆる読者を取り込む要因となっているのではないだろうか。鬼殺隊側の、文字通り「柱」である九人の人物たちが初そろい踏みをする場面では、一人一人がなんらかの発言や行動をとるのだが、それが初めは読者に嫌悪感を抱くように仕向けておいて、読み進めるとそれが彼らの過去の因縁と関係があることがわかり、納得させられる。主要な鬼が死ぬときに、人間であった頃の記憶を思い出し、何らかの悔恨や懺悔をしたりするところに救いがある。作者は多分、登場人物のほとんどに思い入れがあるのではないだろうか。まだ読んでない人、読む気のない人には、とにかく第一巻を手に取り、それで終わることなく二巻、三巻と読み進めれば、面白いと言われる理由がわかるので、ぜひ長く読み進めてみてほしいと思う。