1クールまるまる使った壮大な予告編
巷でかなり人気に火がついているということで、アニメ「鬼滅の刃」シリーズを鑑賞した。
内容としては、心優しい青年である炭次郎が、家族の仇である「鬼」を退治するために、鬼になってしまった妹の禰豆子と共に旅をする、というものである。この作品の魅力は、一人一人のキャラクターに丹念に練りこまれたエピソードであり、それは味方だけでなく敵である鬼にも及ぶ。
人間が鬼になる時、それは単に悪に染まったわけではなく、心の弱さ・脆さが崩れ、コンプレックスや自責の念の裏返しなのである。双方にそれぞれの正義や理屈があり、キャラクターの個性が際立っている。
観る側は、単なる勧善懲悪のストーリーではなく、キャラクター一人一人のドラマ・人生を共に生き、共に成長していくことができるのである。
一方で、がっかりした点もあった。シリーズのラストが、映画の予告に繋がっていたことである。合計26話ものストーリーを鑑賞し、ファンはそのストーリーの中での一応の完結を求めている。しかし、このシリーズでは、一番の盛り上がりでストーリーが終わっており、続きは映画で、と言う形を取っている。もちろん、一ファンとして映画が公開されることは嬉しいのだが、アニメはアニメとして完結して欲しかったという気持ちが大きい。商業手法としては実に見事かもしれないが、純粋に作品を楽しむファンとしては、真っ直ぐに作品として提供して欲しかったと言わざるを得ない。