日本最高峰のアニメ映画。「絆」を描く物語
後に「おおかみこどもの雨と雪」「バケモノの子」を制作する、実力派アニメ映画監督の細田守さんのオリジナル作品。
小磯健二と篠原夏希、後輩と先輩という弱い繋がりから物語が始まり、篠原の親族、祖母の知人、そして世界へ広がっていく展開に感動しました。
社会全体がインターネットへの依存性をより強くした世界で、夏希の親戚である侘助の作ったAI「ラブマシーン」が世界を混乱に陥れていきます。そんな中、陣内栄が知人たちへ連絡を取り助力を願うのは黒電話からというところが、「昔ながらの人と人とのつながり」の象徴のように感じます。
祖母の電話相手と会話している時のセリフは、相手が政治など広い分野で活躍している大物ばかりで、相手の態度から若い頃栄に物凄く世話になったこと、恩を感じているのを感じさせられました。
「あんたならできる」という、女優富司純子さんが担当した栄のセリフから受ける安心感は、昔の彼らもこの言葉に励まされたのでは、と想像されます。
格闘ゲーム世界一の池沢佳主馬が得意ジャンルでラブマシーンに敗北。
自分たちの生活全てを握るアカウントを賭けて、花札勝負を挑んだ夏希はラブマシーンを追い詰め、しかし反撃を受け、絶望したところで世界中の人々が夏希にアカウントを預けるシーンでは涙が流れました。
最後にはラブマシーンが陣内家に人工衛星を落とそうとするのですが、その軌道をずらすべく、国際数学オリンピックの日本代表の座も狙えたとされる健二が、脳を酷使し過ぎて鼻血が出るほどに自身の数学能力を発揮。見事に暗号を突破してわずかながらに軌道を変えることに成功し、さすが主人公!と唸りました。
ラブマシーンの送ってきた暗号をとき、世に放ってしまったと思ってしまっていた自分の解答に計算ミスが発覚、結果的に自分のせいではなかったということが判明するのも「計算ミスにより2位になった」という伏線を回収していて気持ちのいいラスト。
無駄なシーンが一切見当たらず、ここまで完成された映画を見ることはあまりありません。