繊細な心理描写が魅力的
小学生時代から中学生時代が主に描かれています。
読んでいて印象に残るのは、作者の小花美穂氏による繊細な心理描写です。こどもから大人になりかけの時期ならではの葛藤等を非常にリアルに表現しているため、忘れられない作品になりました。
中でも、最終巻辺りで主人公の表情がなくなる「人形病」といった表現をされる話が強烈です。こどもが読むにはある意味ショッキングとも取れる話でしたが、知らぬ間に似たような体験をしたことがあるこどももいるのかもしれない、と思うと「人間ってこうもなるのだな」と感心もしました。
作者の小花氏はきっと、主人公のようにからっとしていて明るいのだろうというのが伝わってきます。所々に挿まれるギャグがそれを物語っています。その一方であそこまで深く細やかな人間の心理を描けるのは、非常にセンシティブな方なのかもしれない、とも取れます。
こどものおもちゃを読まれる方にはそういった描写がかなり印象的だという事は伝えておきたいです。そして、これを当時のりぼんで連載していたのかと思うと、勇気ある話を描いて下さったなあと小花氏の心意気に感激します。
心の傷はどんな子供も負うもので、不思議な事ではないと思って読んでほしいなと思います。